精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

症例報告 | 373-381頁
大西 陽之,垰夲 大喜,森 康治,繁信 和恵,鐘本 英輝,吉山 顕次,岩瀬 真生,橋本 衛,池田 学
Diogenes症候群(DS)は,身体的にも社会的にも問題をきたしうる病態であるが,援助を拒絶する傾向があるため介入が難しいとされる.一方で,今回呈示した症例では介入に従順であり,先行研究と併せて行動異常型前頭側頭型認知症によるDSへの介入は効果的である可能性が示された.DS症例の早期発見と集積は,介入方法の確立のために必要だが,そのためには各自治体と医療機関の連携も重要である.
『精神病理学総論』(ヤスパース)の何よりの意義は,精神病理事象を肯定的に受けとめる準拠枠を創出して,高次の了解地平を切り拓き,精神医学の基礎となる固有なエビデンスを導くことであった.静的了解という点での意義は,とりわけ了解不能な言動や振舞いが際立つ統合失調症の病理現象に対し,記述的エビデンスを導く作業に端緒をつけたことに求められる.
本特集では,「今日の精神医学の検証―バイオマーカーを持たない精神医学の望ましい航路とは―」というテーマのもと,「精神疾患克服をめざして―これまでとこれから―」,「純粋精神医学―伝統的精神医学への回帰―」,「精神医療の守備範囲―精神医療の現場からみたこれからの精神医学―」について論じる.
ICD-11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ:各論⑮ | 409-415頁
藤井 泰,朝倉 聡
ICD-10で「神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害」として分類されたもののなかから,不安または恐怖を中核とするものを抽出して独立させたのが本疾患群である.分離不安症や場面緘黙もここに分類されることとなった. 気分症群,強迫症又は関連症群との関係や,同じ疾患群内での併存の問題,パニック発作の扱いなど,今後も検討が必要であろう.
第117回日本精神神経学会学術総会 学術総会報告 | 416-417頁
木下 利彦
第117回日本精神神経学会学術総会を2021年9月19日から21日の3日間,国立京都国際会館で開催させていただきました.関西医大主催では,1988年前任の斎藤正己先生が大阪にて開催してから33年ぶりでありました.今回のテーマは,「革新と伝統が紡ぐ質の高い精神医学」とさせていただきました.1日平均1,000名の会員に会場に足を運んでいただき,最終的に8,800名の会員にご参加いただきました.

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