精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 681-687頁
中島 創一郎,肥田 道彦,池田 裕美子,濱 智子,船山 拓也,秋山 友美,荒川 亮介,舘野 周,鈴木 秀典,大久保 善朗
経頭蓋直流電気刺激(Transcranial Direct Current Stimulation:tDCS)は,微弱な直流電流を頭蓋の外から与えるニューロモデュレーション法であり,精神科的治療法の一つとして期待されている.本稿では、左背外側前頭前野に陽極tDCSを施行した際の,運動学習および言語処理時の脳機能への効果について知見を紹介する.
総説 | 688-699頁
糸川 昌成,大島 健一,鳥海 和也,吉川 茜,堀内 泰江,宮下 光弘,宮野 康寛,石田 裕昭,小堀 晶子,井上 智子,新井 誠,鳥居 洋太,久島 周,入谷 修司,尾崎 紀夫,鈴木 芳,野口 千太,雑賀 里乃,水谷 隆太
統合失調症の脳の代謝と構造について概説し,統合失調症研究の再現性問題を解決する方策の1例として,症候群から抽出した糖化ストレスを伴う小亜種を紹介した.脳構造を個人差レベルまで識別できる解像度をもつ放射光ナノCT法により,脳血管と神経細胞の構造アンバランスを同定した自験例を,統合失調症のエネルギー代謝研究への応用例として紹介した.
資料 | 700-709頁
片山 宗紀,杉浦 寛奈,藤城 聡,小原 圭司,本田 洋子,天野 託,小泉 典章,田辺 等,白川 教人
本研究では,COVID-19が全国69の精神保健福祉センターの依存症支援体制に与えた影響を調査した.センターが行う集団療法・家族会や自助グループの活動中止の他,両者間の交流制限,自死を含むセンター利用者の症状悪化など,大きな影響が生じていたことがわかった.当事者の回復のため,COVID-19感染症流行下における地域の依存症支援体制の維持が求められる.
特集 | 710-731頁
林 良太,稲富 宏之,石井 良平,黒田 健治,田平 隆行,横井 賀津志
本特集では,「作業療法・精神科リハビリテーションの現在」というテーマのもと,「統合失調症のリハビリテーション・作業療法―「結論への飛躍」に注目して―」,「地域在住認知症高齢者の手段的日常生活活動に対するリハビリテーション」,「作業を基盤とした,地域に溶け込んだ介護予防」について論じる.
ICD-11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ:各論⑰ | 732-739頁
小川 しおり,岡田 俊
ICD-11神経発達症群の診断のうち注意欠如多動症および自閉スペクトラム症を除いた5つの診断名について概説する.神経発達症は発達期早期に現れて成人期まで持続する認知行動特性であり,日常生活機能に障害をきたす.知的発達症については,DSM-5に次いで診断名が変わり,IQの数値での重症度分類がなくなり,行動指標を使用し適応機能の評価を重視するようになった.

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