精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 311-316頁
小野 靖樹,菊知 充
定常聴性反応は統合失調症や成人の自閉スペクトラム症で健常者との有意差が報告されており,今回は幼児期について検討した.定型発達,自閉スペクトラム症とも定常聴性反応を認めたが,両郡間で明らかな有意差を認めなかった.しかし定型発達児では右側の定常聴性反応は年齢と相関した.また左側の40Hzの定常聴性反応は両群において知能と相関を示した.
成人期に初めて注意欠如・多動症(ADHD)と診断する機会が増えているが,成人後に顕在化するADHDの臨床症状は認知症の初期症状とも共通している.今回は,ADHDと診断されていたが,その後の経過や諸検査から若年性Alzheimer型認知症と診断を変更した症例を通して,成人期ADHDと若年性認知症の類似点・鑑別点について述べる.
特集 | 326-360頁
村松 太郎,黒田 公美,白石 優子,石塚 佳奈子,木ノ元 直樹,夏苅 郁子
本特集では,「同意取得が困難な事例を対象とした症例報告や研究における問題点と課題」というテーマのもと,「司法精神医学における症例報告」,「児童虐待刑事事件の生物・心理・社会要因に関する質問紙調査―妥当性,安全性および倫理的配慮―」,「「遺伝負因」の終焉から当事者・家族と進めるゲノム医療へ―ゲノム解析・遺伝カウンセリングに携わる臨床遺伝専門医の立場から―」,「同意取得困難事例を対象とする症例報告や研究における問題点と課題―法律家の視点―」,「当事者にとって症例報告の意味とは何か―同意取得が困難な事例を含めて,当事者・家族の立場からの検討―」について論じる.
ICD‒11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ:各論③ | 361-366頁
中尾 智博
ICD—11における強迫症または関連症群(OCRD)には, 強迫症(OCD),身体醜形症や抜毛症,皮膚むしり症,ためこみ症, 自己臭関係付け症,心気症が収載されている.OCRDは,OCDを中心に強迫的な行動様式が病態の中心にある疾患群を1つのカテゴリーにまとめたものである。今回のカテゴリー新設が、生物学的な病態解明や臨床的な理解,新しい治療戦略の構築につながることを期待したい.

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