精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

総説 | 241-247頁
江﨑 悠一
双極性障害は高照度光療法や暗闇療法など、光曝露との密接な関連が指摘されている.しかし,現代社会における光曝露環境が双極性障害の病状にどのような影響を及ぼすのかは明らかになっていない.著者は、218 例の双極性障害患者に対して日常生活光曝露を評価し,病状との関連解析を行った.その結果,光曝露は双極性障害の様々な病状と関連することを明らかにした.
原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)の2 症例を提示し,腺腫の外科的切除後の経過から,PHPT の病態や臨床症状・認知障害の特徴について考察した.外科的切除後の認知機能は,身体・精神・神経症状と同様に大幅に改善した.PHPT の認知障害の特徴は,アルツハイマー病に類似はしているが,特に注意力の低下が目立った.早期のPHPTにおける疼痛発生機序のさらなる解明が待たれる.
精神科医と心理士の協働は強調されてきたが、両者が協働する意識や機会は乏しい。強迫性障害の患者と母に精神科医と心理士が協働して症状の改善と母子関係の変化がみられた症例を報告する.精神科医は介入の枠組みとそれぞれの役割を分ける枠組みを親子と共有し,心理士はそれに基づいてカウンセリングを行った.この方法は協働する際に有用である可能性がある.
本特集では,「重症認知症の人にどのような終末期対応を提供するのか―「認知症診療医」認定更新のために―」というテーマのもと,「認知症の人の医療選択に関する意思決定支援」,「重度認知症患者のコミュニケーション能力への対応―言語機能の低下と意思疎通の工夫―」,「認知症高齢者の移動歩行能力への対応―転倒予防と身体的拘束の低減―」について論じる.
ICD‒11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ:各論② | 287-293頁
杉原 玄一,村井 俊哉
2018年にICD‒11診断ガイドライン草案が公表された.本稿では,ICD‒11草案における「統合失調症または他の一次性精神症群」に含まれる疾患について概観する.特にICD‒10からの変更,DSM‒5との比較を踏まえ,本章に含まれる疾患の診断要件,疾患の特徴,除外診断などを紹介する.

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