精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

新型コロナウイルス感染症流行が大学精神医学教室に与えた影響について,精神医学講座担当者会議で第1,2波に合わせてアンケート調査を行った.精神科病棟のコロナ病棟への転用を含むさまざまな診療への影響とともに,医学生の臨床実習と研修医や専攻医の教育における困難があり,後継者となる医学生や研修医との交流が難しくなったという影響が浮き彫りとなった.
資料 | 721-731頁
小池 純子,柴崎 聡子,河野 稔明,熊倉 陽介,大塚 俊弘,小口 芳世,袖長 光知穂,小野 和哉,古茶 大樹,竹島 正
警察官通報の対象特性を調査したところ,3年間に2回以上の通報がなされた対象者は,精神病圏以外の精神障害の割合が高く,措置不要判断後に医療保護入院の割合が低く,入院外対応の割合が高い傾向にあった.通報に至ったことをクライシスコールと捉えるならば,自傷他害行為の背景となった対象者のかかえる困りごとに沿った地域生活支援の視点が必要と考えられた.
特集 | 732-760頁
森川 真子,岡田 俊,蟹江 絢子,久保田 智香,中嶋 愛一郎,三田村 康衣,伊藤 正哉,堀越 勝,細金 奈奈
本特集では,「周産期における母親のメンタルヘルスと子どもの養育支援」というテーマのもと,「妊産婦のメンタルヘルスの実態と支援の方向性」,「養育者のメンタルヘルスと子どもの心理的・情緒的発達」,「周産期におけるメンタルヘルスの不調に対する認知行動療法に基づく支援」,「養育困難を抱える親に対する乳幼児期の養育スキルの支援」について論じる.
第116回日本精神神経学会学術総会 特別講演 | 761-768頁
那波 宏之
脳神経科学も統合失調症研究も,その歴史は100年を超える.この間,統合失調症の原因研究は実に100を超える病因仮説を生み出し,むしろ混迷を深めているようにも思える.その原因は何であろうか.幻覚様の認知知覚障害はヒト特有のものだろうか.ここでは基礎神経科学の現状を踏まえて,独自の視点から統合失調症に対する動物モデル研究の課題と展望を紹介したい.
ICD-11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ:各論⑧ | 769-772頁
森野 百合子
排泄症群は,ICD-10では「小児期および青年期に通常発症する他の行動および情緒の障害」に含まれていたが,ICD-11では排泄症群の遺尿症 Enuresis,遺糞症Encopresis「ベッドや衣服への繰り返しの排尿」(遺尿症)および「不適切な場所への繰り返しの排便」(遺糞症)としてまとめられ,成人でも診断可能な実臨床に沿った内容となった.

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