精神医学のフロンティア | 629-639頁
織部 直弥,平野 羊嗣,上野 雄文,鬼塚 俊明
本研究では,精神病ハイリスク群と健常群で,視覚P300を縦断的に評価した.ハイリスク群では,両時点で視覚P300振幅が減少し,潜時が遅延しており,振幅の低下は陽性症状の重症度と相関していた.視覚P300がハイリスク群の臨床症状の背景にある病態生理学的障害を反映する指標である可能性が示唆された.
特集 | 640-665頁
菊地 紗耶,小林 奈津子,本多 奈美,富田 博秋,西郡 秀和,本村 知華子,三宅 和佳子
本特集では,「児童虐待を予防する―産婦人科医,小児科医,精神科医のコラボレーション―」というテーマのもと,「虐待予防のために精神科医ができること―周産期メンタルケア外来の実践から―」,「産科における胎児・児童虐待予防に向けた両親の支援と他科への引き継ぎの重要性」,「児童虐待の対策・予防に向けた家族支援における小児科医の役割」,「小児総合病院における複数診療科,多職種連携による虐待予防―安定した精神状態での子育てを支援すること―」について論じる.
特別講演 | 666-675頁
Craig L. KATZ
Disaster psychiatry applies mental health knowledge and expertise to the setting of disasters. But, the context of service delivery, the relevance of psychiatric diagnosis, the clinical interventions, and the personal challenges for the psychiatrist are all vastly different from the rest of psychiatric practice. In order to help psychiatrists judge whether to engage in acute disaster psychiatry or prime them for how to engage in it, this paper reviews the rewards and the challenges of engaging in this work. Ultimately, the challenges outnumber the rewards, but the disaster psychiatrist sees rewards even in the challenges.
ICD-11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ:各論⑥ | 676-683頁
金 吉晴
ストレス関連症群はPTSD,適応反応症,アタッチメント症,脱抑制性対人交流症を含む.新たに複雑性PTSD,遷延性悲嘆症を採用し,急性ストレス反応を削除したことはDSM-5との相違点である.解離症群は解離性健忘,トランス症,離人感・現実感喪失症を含む.転換症に相当する神経学的症状症を解離症群に含めていることは,DSM-5との相違点である.
ICD-11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ:各論⑦ | 684-687頁
吉内 一浩
ICD-11における食行動症または摂食症群は,ICD-10における「摂食障害」と「乳幼児期および小児期の哺育障害」「乳幼児期および小児期の異食症」が統合されたカテゴリーで,年齢による区分が廃止された.また,DSM-5 に合わせる形式で,新たにむちゃ食い症と回避・制限性食物摂取症,反芻・吐き戻し症が独立した疾患として追加された.