精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 0803-0811頁
笹林 大樹,高柳 陽一郎,高橋 努,根本 清貴,古市 厚志,木戸 幹雄,西川 祐美子,中村 美保子,野口 京,鈴木 道雄
大脳皮質の脳回形成は早期神経発達の生物学的指標とされる.本研究では統合失調症患者,統合失調型障害患者,健常者において局所脳回指数を比較した.両疾患で認めた両側前頭前野・左頭頂皮質の脳回過形成は統合失調症スペクトラムに共通した脆弱性を表し,統合失調症で顕著な右前頭前野・左後頭皮質の脳回過形成は精神病症状の顕在化に関連した異常の可能性がある.
利益相反は,第一義的な利益における判断が第二義的な利益によって歪められる可能性がある状態である.医師の3つの責務(診療・研究・教育)において利益相反が発生しうること,それぞれの責務の第一義的な利益同士が対立しうることに注意を要する.患者の最善の利益が,研究や医学教育への協力によって損なわれる可能性を,私たちは認識しておく必要がある.
討論 | 0822-0831頁
古茶 大樹
司法精神医学的見地からクレプトマニアの責任能力について考察した.その概念が理念型であることを指摘し,DSM‒5 の診断基準に沿って典型例を描写した.次にその概念の適用範囲は医療の場では司法の場よりも広いことを指摘し,法廷では常習窃盗に対して診断基準を厳密にあてはめる必要性を説いた.情状という法律問題についても意見を述べた.
特集 | 0832-0860頁
原田 誠一,渡辺 俊之,中尾 智博
本特集では,「精神科専門医に必要な精神療法の学び方」というテーマのもと,「精神療法の必要性と有効性について,改めて考えてみよう―精神科専門医をめざす先生方への10 段階のメッセージ―」,「精神療法研修があたえてくれたこと」,「精神療法の学び方―個別性とプログラム―」について論じる.
第115回日本精神神経学会学術総会 会長講演 | 0861-0873頁
染矢 俊幸
「こころ」の問題の基盤にある「脳」機能の理解を深め,一方で,還元的理解ではなく総体としての人間,一人ひとりの「人」を主役において「こころ」・「脳」をつなぐ精神医学 − その人の人生経験や価値観を理解する医学をめざしたいという思いを基調にした会長講演を抜粋し,診断学,治療学の進歩も含めた精神医学の現状と課題をさまざまな角度から論じた.

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