精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

討論 | 741-751頁
永田 利彦,山下 達久,山田 恒,水原 祐起,水田 一郎,野間 俊一,田中 聡,崔 炯仁,和田 良久,岡本 百合,鈴木 眞理,宮岡 等
多くの若年女性がダイエットに励み,痩せすぎに陥っている.アカゲザルでの30年間カロリー制限実験は,若年からのカロリー制限が人間でも寿命を縮める可能性を示した.ダイエットは摂食障害の発症要因であり,背景に痩せ礼賛文化がある.メディアの影響は大きく,世界各国では痩せすぎモデル規制が進んでいるのに,日本では全く規制がないことを論じた.
精神神経学会の「ガイドライン」で症例報告における患者同意が原則,義務づけられたが,議論不十分な決定である.例外はあるとしても,匿名化によってプライバシーは守りうるし,匿名化された「症例」は私有財産ではなく公共財産である.この規定により症例報告が抑制されることは,臨床・研究を貧困化する.「ガイドライン」は議論を深め,改訂されるべきである.
精神神経学雑誌は,症例を提示した論文では原則として本人同意を得ることを2018年4月から投稿規定に加えた.研究倫理の基本,電子化時代の読者層の変化,そして精神神経学会の新たな倫理規定を踏まえての改訂である.症例報告においても,他の研究同様に患者・家族との協力関係を基盤とし,その同意とともに研究を遂行しなければならない.多くの投稿をお待ちする.
特集 | 759-789頁
鈴木 貴之,植野 仙経,田所 重紀,榊原 英輔
本特集では,第113回日本精神神経学会学術総会において開催された同名のシンポジウムの発表内容に基づき,各演者が「バイオサイコソーシャルモデルと精神医学の統合」,「了解とシミュレーション」,「精神療法から創る新しいメンタルヘルスの基礎理論」,「精神科臨床におけるニューロエンハンスメント」について論じ、精神医学の哲学の着眼点を紹介する。
特集 | 790-819頁
池田 匡志,内田 周作,篠崎 元,朴 秀賢
本特集では,「臨床医にもわかる分子精神医学講座」というテーマのもと,「精神科ゲノム学―一塩基多型(SNP)とコピー数変異(CNV)を用いた遺伝子関連解析―」,「非コードRNAによる脳機能制御とその破綻による精神疾患」,「精神疾患におけるエピジェネティクスの役割の基礎―DNAメチル化を中心に―」,「ゲノム編集技術が切り開く精神疾患研究の新時代」について論じる.
連載 精神科多職種チームの協働 | 820-827頁
梅田 麻希
行政保健師(保健師)は,社会的孤立に陥っている精神障害者のニーズを顕在化させ,新しいサービスを創造する役割を果たしてきた.保健師の強みは,住民との接点を多くもっていること,法律を根拠にすべての住民を対象とした活動を行えることである.本稿では,多職種連携の促進を念頭に,保健医療職かつ行政職である保健師の活用方法について紹介する.
連載 精神科多職種チームの協働 | 828-834頁
竹内 新治
理学療法士は身体機能のアセスメントならびにリハビリテーション(理学療法)の実施を通じ,疾病などによる機能低下や障害から機能回復を図ることに携わる専門職である.本稿では理学療法士の特性や多職種チームでの役割、精神科医療の中での活かし方について事例を提示しながら論じる.

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