青年期に統合失調症と診断された患者が,初老期・老年期にCotard症候群に特徴的な症状を呈した3症例を報告した.過去の報告例を検討し,Cotard症候群の成因には,基礎疾患にかかわらず,加齢・性差といった生物学的因子が関与している可能性を指摘した.またCotard症候群を含む「人生後半期精神病」の病態仮説に関しても考察した.
本特集では,「どこから薬物療法を実施すべきか」というテーマのもと,「抑うつ障害に対する抗うつ薬適応の閾値」,「不眠の患者にどこから薬物療法を開始するか」,「社交不安障害(SAD) どこから薬物療法を始めるべきか」,「月経前不快気分障害(PMDD)」について論じる.
急性向精神薬中毒では,誤嚥性肺炎,異常体温,非外傷性挫滅症候群/コンパートメント症候群を見逃さずに管理する.吸収の阻害としては,活性炭の投与を考慮する.排泄の促進としては,腸肝循環するフェノバルビタールやカルバマゼピンには活性炭の繰り返し投与を考慮する.拮抗薬・解毒薬としては,三環系抗うつ薬中毒では炭酸水素ナトリウムが有効である.
多剤大量処方から「1つずつ,ゆっくりと,休んでもよい」現実的な減量法(SCAP法)が考案された.163例の臨床研究では,臨床症状・副作用は変化なく,悪化による脱落も少ない方法だと検証された.今後ガイドライン策定に向けたさらなる検討と解析を行っている.今後高齢化する精神医療の中で,この緩やかな是正は,負担が少ない現実的な方法と考える.