精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 0249-0260頁
島田 岳,大堀 愛美,稲垣 佑輔,下岡 佑子,石原 郁代,杉村 直哉,田中 佐千恵,小林 正義
精神科病院に入院し1年以内に退院した統合失調症患者を対象に2年間の追跡調査を実施した.入院時に通常治療の集団作業療法に個別作業療法を追加した群の再入院率は28.57%であり,集団作業療法のみを実施した群の再入院率71.43%より有意に低く,再入院までの時間も有意に延長した.本研究は個別作業療法が再入院の予防に有効であることを示している.
本研究は,1956年に行われた在院精神障害者実態調査の個票を用いて在院期間と入院医療費財源との関連を分析した.その結果,生活保護法での入院期間は,社会保険と比べて,統合失調症で約9ヵ月,躁うつ病で約10ヵ月,てんかんで約17ヵ月長かった.このことは,生活保護法での入院長期化が,1950年代にはすでに形成されていた可能性を示唆している.
特集 | 0282-0309頁
小平 雅基,岡田 俊,岩垂 喜貴,渡部 京太
本特集では,「精神疾患の背後に発達障害特性を見いだしたとき,いかに治療すべきか」というテーマのもと,「自閉スペクトラム症傾向を認める強迫症者への介入」,「神経発達症に伴う不安と神経発達症の二次障害としての不安症」,「ある入院症例を通して発達障害を有する患者のトラウマ関連症状を考える」,「ボーダーラインパーソナリティ特性と発達障害特性」について論じる.
第115回日本精神神経学会学術総会 精神医学奨励賞受賞講演 | 0310-0316頁
久島 周
自閉スペクトラム症と統合失調症の日本人患者を対象に,低頻度(1%以下)の稀なゲノムコピー数変異(CNV)に着目したゲノム解析を行った.その結果,両疾患の患者の約8%で病的意義をもつCNV を同定するとともに,変異(CNV)と病態のレベルで両疾患の共通性を見出した.また,病的CNV をもつ患者は,知的能力障害の併存率が高いことも見出した.

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