精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

「自殺ではない精神障害」の労災認定件数も年々,増加しているが,労災保険の障害給付の場合は,原則としてその傷病が治ゆしない限り障害認定はされない.そのため治ゆに至らない精神障害事例の長期療養が大きな社会問題になりつつある.2014年度から2017年度までの労災疾病臨床研究事業をとうして,その問題点を明らかにしたので報告する.
重篤な身体疾患の当事者だったJaspers, K. が治療実践に関心をもっていた.本検討では,『Allgemeine Psychopathologie』付録に記載されている治療に関する議論の変遷を,初版から第四版まで概観した.当時は催眠療法と精神分析の交代期であり,特定流派に依らない支持的な精神療法を考える点で貢献すると考えられた.
資料 | 0749-0756頁
福田 陽明,邊土名 智代,今井 淳司,井藤 佳恵,正木 秀和,大澤 達哉,阪下 健太郎,松村 謙,林 栄治,小野 正博,針間 博彦,杉井 章二,齋藤 正彦
東京都立松沢病院は,精神疾患を併存するCOVID‒19確定/疑い患者を2020年3月6日から同年5月9日までに73名受け入れた.COVID‒19患者数の増加に伴い,今後は精神疾患併存例も増加することが見込まれる.本報告では第一報として2020年5月9日時点の当院の体制と,患者についての中間報告を行う.さらに今後の課題提示として,精神疾患併存患者ならではの問題を共有する.
特集 | 0757-0788頁
嶺 輝子,新谷 宏伸,伊藤 絵美,鈴木 孝信
本特集では,「ICD-11に収載された複雑性PTSDの理解と治療―トラウマケア技法の実際―」というテーマのもと,「ホログラフィートークの複雑性PTSDに対する適応の可能性」,「Unification of Subconscious Personalities by Tapping Therapy(USPT)による解離症の治療―第二次構造的解離としての複雑性PTSD―」,「複雑性PTSDに対するスキーマ療法の適用可能性」,「ブレインスポッティング:新しい複雑性PTSDへの心理療法―視野上の注視により強められたトラウマへの焦点化と共通要因の活用―」について論じる.

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