精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

総説 | 561-569頁
西園マーハ文
本論文では,摂食障害の治療における認知行動療法とその応用について論じる.神経性過食症では,認知行動療法の効果が知られているが,海外では,本格的治療の前に,認知行動療法の要素を含んだガイデッドセルフヘルプの実施も推奨している.従来,神経性やせ症では認知の修正は困難とされてきたが,再発防止等には認知への働きかけが効果を持つ可能性もある.
原著 | 570-583頁
岡田 剛史,塩田 勝利,小林 聡幸,西多 昌規,須田 史朗,加藤  敏
総合病院精神科病棟において,過去7年に生じた22例の肺炎症例の検討を行った.重症度,細菌学的特徴は院内肺炎や医療・介護関連より市中肺炎に近かった.また,PSIを用いて重症度を分類したところ,中等症以上群(7例)では軽症群(15例)に比べ,精神症状が重く,benzodiazepine系薬および抗パーキンソン薬の使用量が多かった.
特集 | 584-614頁
鈴木 雄太郎,稲垣 中,松尾 幸治,岸本 泰士郎
本特集では,「Pros and Cons統合失調症における持効性注射剤の有用性」というテーマのもと,「持効性注射剤使用の安全性:持効性注射剤はあった方がよいですか?―反対の立場から―」,「長時間作用型注射製剤の安全性:LAIは本当に危険な治療薬なのか?―賛成の立場から―」,「持効性注射剤の効果:持効性注射剤は本当に必要な治療オプションか―反対の立場から―」,「臨床研究デザインの限界に注目しながら持効性注射剤(LAI)の効果について検証する―LAI賛成の立場から―」について論じる.
適切な治療を導ける,遺伝子多型による「オーダーメイド治療」研究から臨床現場への回答が待ち望まれている.これまでの,ゲノムワイド関連研究では有用な遺伝子変異が特定されていないが,薬物動態・薬力関連遺伝子では幾つかの遺伝子の可能性が示唆されている.実臨床での応用も重要な検討課題である.本稿で,うつ病のオーダーメイド治療の現状を概観してみたい.

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