Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第8号

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教育講演
第111回日本精神神経学会学術総会
うつ病の「オーダーメイド治療」は,どこまできているのか?
加藤 正樹
関西医科大学精神神経学教室
精神神経学雑誌 118: 615-624, 2016

 うつ病の生涯有病率は10%で,さらにその15%が自殺と関連しており,社会的,個人的にその対策が急務とされている.しかしながら,抗うつ薬を使用しても反応が乏しい,あるいは副作用が出現しやすい一群が存在し,治療に難渋してしまうため,適切な治療を導ける生物学的指標は臨床からのニーズが高く,遺伝子多型に基づく適切な治療「オーダーメイド治療」をめざしたゲノム薬理(PGx)研究から臨床現場への回答が待ち望まれている.では実際にうつ病の「オーダーメイド治療」はどこまできているのであろうか? これまでの知見からの仮説によらない,ゲノムワイド関連解析研究では各試験で一致するような遺伝子変異が見いだされていないが,抗うつ薬の血中濃度に影響する薬物動態関連遺伝子に関しては日本人に20%の頻度で存在する肝代謝酵素の遺伝子CYP2C19完全欠損者において,いくつかの抗うつ薬で用量の減量が推奨されている.また,血液脳関門で脳内薬物輸送を担い,脳内薬物濃度に影響するP糖タンパクをコードするABCB1遺伝子の変異による薬剤調整の可能性も検証されている.抗うつ薬の薬理作用に直接関与する,薬力関連遺伝子に関してはセロトニントランスポーターにある5-HTTLPRと抗うつ効果は比較的強い相関があり,個別化医療に利用できる可能性が示唆されている.これらの結果を,実臨床にどう応用するかというトランスレーショナルな検討が課題であろう.本稿では,PGx研究の現在をわかりやすく解説し,うつ病のオーダーメイド治療がどこまできているのかを概観してみたい.

索引用語:個別化治療, 抗うつ薬, うつ病, 候補因子, 反応予測>
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