精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

出生コホート研究によって,さまざまな転帰の因果関係を検討することができる.英国は全国出生コホート研究が10数年おきに実施され,研究結果に基づいた政策提言がなされている.日本では,周産期,学校,職場,医療,行政などで,健診や調査が日常的に実施されており,今後これらを連結し,研究分野からの提案を取り入れるなどの整備が望まれる.
資料 | 199-211頁
日本精神神経学会 精神医療・保健福祉システム委員会
都道府県の精神疾患医療計画の内容を分析した.地域医療連携を進める協議の場の記載は半数以下,各種疾患に関連した機能を担う医療機関名の記載は約半数,医療改善に結びつく数値目標の記載も少ないといった課題が認められた.精神保健福祉法第41条「指針」,障害福祉計画,介護保険事業計画などと連動させて,医療計画の推進と評価,見直しを継続していく必要がある.
特集 | 212-241頁
小椋 力,目黒 克己,吉住 昭,中山 勲,西園 昌久
本特集では,「本学会の「沖縄精神科医療委員会」活動の検証―50年が経過して―」というテーマのもと,「派遣医制度と本学会活動の概略」,「半世紀前の沖縄における精神科医療状況と派遣医制度」,「派遣医がみた当時の沖縄精神科医療の状況と活動―そしてその後―」,「派遣医を受け入れた沖縄の当時の状況と現在」,「派遣医制度と本学会活動の歴史的評価」について論じる.
教育講演 | 242-248頁
池淵 恵美
精神科医の役割は,内面的な困難を支え,生きがいの創出や生活のしやすさにかかわることにある.そのために必要な就労,恋愛・結婚,一人暮らしを支援する知識・技術や仲間について述べた.薬物療法抵抗性のさまざまな精神症状や社会機能への大きな影響など,まだ精神科医療では十分手が届かない障碍があり,その中で希望を育みつつかかわることが求められている.
教育講演 | 249-255頁
小西 聖子
現在の犯罪被害者支援の状況,およびそれに対応する精神科医療の現状について概略を述べ,続いて心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された性暴力被害者自験例を提示した.精神科診療で見逃されやすい回避症状および解離の一症状としての感情の麻痺を取り上げ,実際の場面での症状の評価と心理教育について解説した.

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