精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 957-964頁
久木原 博子,他
東日本大震災後に仮設住宅へ避難した人々の心身の健康状態を調査し,レジリエンスに関連する要因を調べた.対象者の抑うつ,PTSRの発生率は高かった.レジリエンス高群は低群より健康関連QOL,抑うつ,PTSR得点が有意に高く,レジリエンスはPTSRの有意な予防要因であった.また,レジリエンスには職業,食習慣,運動習慣などが影響していた.
大学生の学業の滞りは社会的損失や自殺を引き起こしかねず,特に精神疾患をもつ学生はこの問題を抱えやすい.今回,筑波大学保健管理センター精神科の診療録をもとに罹病学生の学業転帰とその要因を調査したところ,留年・休学と引きこもりが退学に有意に関係することがわかった.このため,治療のみならず心理社会的重症度や不適応状態への対策が必要と考えられた.
特集 | 978-1003頁
岡島 美朗,他
本特集では,「死にゆく患者/遺族に対する精神療法的接近」というテーマのもと,「なぜ死にゆく患者やその家族へのアプローチは難しいのか」,「こころの中に安易に踏み込んではいけないこともある―「否認」をケアすることの大切さ―」,「進行・終末期がん患者への精神療法―ただ支持し続けることの大切さ―」「遺族ケア」について論じた.
教育講演 | 1004-1010頁
大森 哲郎
薬物療法の要諦は不要な薬物は使わないという心がけにある.了解可能な心理反応ならば使用しなくてもよい.抑うつ状態に関しては,抗うつ薬の作用は健常者にも効果が及ぶような非特異的な気分改善作用はなく,うつ状態の基盤にある脳科学的変化を是正して効果を発揮する.使用する際には必要最小限の介入すなわち単剤使用が基本となる.
Current Topics | 1011-1014頁
精神療法委員会 藤山 直樹
精神科専門医に求められる精神療法とはどういうものか.それについての私たちの答えは,それは良好な「治療関係の構築と維持」を目標とする心理的交流である,というものである.このことの意味,なぜそれが求められるのか,そのための研修や訓練の必要性,研修や訓練はどのようになされるのかを論じよう.

このウィンドウを閉じる

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology