Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第12号

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資料
精神疾患が大学生の学業転帰に与える影響―保健管理センター診療録を用いた後方視的研究―
石井 映美1)2), 太刀川 弘和1)2), 堀 孝文3), 石川 正憲1)2), 畑中 公孝4), 相羽 美幸5), 朝田 隆6)
1)筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学
2)筑波大学保健管理センター精神科
3)茨城県立こころの医療センター
4)石崎病院
5)東洋学園大学
6)メモリークリニックお茶の水
精神神経学雑誌 117: 965-977, 2015
受理日:2015年4月16日

 大学生の学業が滞ることは,社会的損失を引き起こし,時に自殺のリスクをも高めうる重大な問題である.特に,精神疾患をもつ学生は学業に問題を抱えやすいと考えられるが,卒業・退学など学業転帰に関する報告やその要因について検討したものは少ない.そこで,今回我々は,筑波大学保健管理センター精神科の診療録をもとに,精神科通院学生の学業転帰とその要因を調査した.【対象】2004~2013年度に筑波大学保健管理センター精神科を受診し,すでに学業転帰(卒業,退学)が決定済みの自験例の学群学生(学部生)を対象とした.【方法】対象学生の学業転帰を許可を得て本学の成績管理システムにより調べ,得られた結果から卒業群・退学群に分けた.両群の診療録を後方視的に調査し,属性,精神医学的評価項目,治療に関する評価項目,修学状況など,転帰に影響すると推測される要因について,統計学的手法を用いて検討した.【結果】退学群は,初診時により低学年,より重症であった.また,診療回数がより多く,担当教官との連携がより少なく,引きこもり・休学期間が有意に長く留年が有意に多かった.時間的要因を取り入れて評価したところ,留年・休学と引きこもりの有無は,退学に有意に関係した.【結論】学業転帰には,精神疾患自体のみならずこれに伴う二次的な心理社会的重症度,不適応状態が影響を与えることが明らかになった.このことから転帰改善のためには,疾患の適切な治療のみならず,罹患学生の引きこもりなど社会的不適応状態に対する大学コミュニティの支援,生活支援教育,個別生活支援,教育組織との連携による学業支援などが必要と考えられた.

索引用語:学業転帰, 診療録, 留年・休学, 引きこもり, 自殺>
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