精神医学のフロンティア | 727-734頁
竹内 武昭,他
本研究ではメタボリック症候群とうつ病の関連を非定型症状の観点から明らかにすることを目的とした。日本人男性1,011人を対象とし、メタボリック症候群と大うつ病を非定型とそうでない群に分類し評価した。メタボリック症候群と非定型うつ病には関連があったが、そうでないうつ病には関連性が認められなかった。特に過食が重要な因子であると考えられた。
向精神薬の副作用は、完全に予見し予防する事は不可能であるため、日常臨床において体系的継続的にモニタリングする事が重要である。本稿では、日本精神神経学会薬事委員会「向精神薬の副作用診断・治療対応マニュアルタスクフォース」での議論を踏まえて、副作用に対する全般的事項、副作用モニタリング、医薬品副作用被害救済制度について概説した。
症例は25歳の男性。20歳時に気分循環症(ICD‒10)が発症、種々の抗うつ薬で治療されたが改善はみられなかった。一方、20歳時から現れた日中の過度の眠気や起床困難は睡眠の精査によって概日リズム睡眠障害(睡眠相後退型)と確診できたため、Ramelteon 8mg/day 夕食後に単剤投与した。その結果、睡眠障害と精神症状は著明に改善した。
治療関係と薬物療法は相互に影響しあうものであり、両者の相互作用に臨床医が留意することにより、不要な「薬漬け」も回避しえよう。本特集では、一般の精神科外来診療における薬物処方と治療関係の相互作用を重視し、薬物療法のいわゆる精神療法的側面を見直すとともに、治療関係の構築を意識することによって薬物療法がいかに機能しうるかについて考えたい。