精神神経学雑誌

116巻7号 掲載論文ハイライト

東日本大震災から1年4ヵ月が経過した宮城県の高校生1,973名に対して心理調査を行った。結果、生徒全体を通して高い抑うつ傾向、不安傾向(いずれも女性の方が有意に高い)が認められた。不安傾向の高さは学年の上昇と正の相関関係が認められたが、これは学年が上がるほどに被災地における人生の進路選択に直面するためと考えられた。
平成24年3月、医療計画の重点疾病に精神疾患が入ることとなり、平成25年度から各都道府県において、新たな医療計画の運用が開始した。それを踏まえ本特集では、「精神疾患の医療計画と精神科医への期待」「長野県における医療計画策定経過と概要」「身体合併症に関する地域連携の取り組み」「総合病院精神科機能の充実と地域との連携」について論じる。
児童精神医学の実践と研究は幅広い領域と関連し、とりわけ成人精神医学とは緊密な連続性がある。本特集では、「児童精神医学の研修システムにおけるキャリーオーバー」「精神医学の臨床研究における小児期から成人期への連続性と非連続性」「司法領域における発達障害の問題からみた児童精神医学のキャリーオーバー」「成人精神医学からみた児童精神医学の役割」の4論文を通し、発達過程を見据えた精神医学構築の必要性について述べる。
教育講演 | 616-620頁
白瀧 貞昭
精神科医による学校精神保健活動の一環としての学校・園との連携は何らかの精神疾患をもっている児童生徒に対する治療の一部としての援助だけでなく、精神不健康発生の予防的対処への援助の両方を含むのだとの認識が肝要である。この認識をすべての教師に持ってもらうために精神科医が学校・園に赴いて、具体的事例の検討を教師とともに行うことが役に立つ。
震災・原発事故直後に、相双地域の精神科医療は大きく障害されたが、「福島医大こころのケアチーム」の活動をもとに、24年1月から「相馬広域こころのケアセンターなごみ」、「メンタルクリニックなごみ」のアウトリーチ事業が始まり、同地域のこころの健康を守る事業が進んだ。これに対し25年度日本精神神経学会精神医療奨励賞が授与されたことに感謝申し上げる。

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