Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第7号

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精神医療奨励賞受賞講演
第109回日本精神神経学会学術総会
相双地域に新しい精神科医療保健福祉システムをつくり震災・原発事故からの復興再生を進めよう
丹羽 真一
相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会理事
福島県立医科大学会津医療センター精神医学講座特任教授
精神神経学雑誌 116: 621-625, 2014

 震災・原発事故直後に,福島第一原発から30 kmの同心円の中にある精神科病床を有する病院5つは入院患者を30 km圏の外の地域の病院へ移送することが求められた.その結果,合計800人ほどの精神科入院患者が福島県内外の病院へ移送され,その5病院が一旦閉鎖され,3クリニックも一旦機能を停止した.福島県立医科大学医学部神経精神医学講座と,同大学看護学部家族看護学部門精神看護の有志が「福島医大こころのケアチーム」を作り,平成23年3月末から相馬市の公立相馬総合病院に「臨時精神科外来」を設け,こころの問題を抱えて困っておられる方々の外来診療を開始した.その後,訪問サービスとクリニックを行う地域のベースを作ることとなり,全国から支援に入った方々の御援助をいただきながら,23年の12月にNPO「相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会」を立ち上げ,それまで精神科医療施設がなかった相馬市の建物を借り,「相馬広域こころのケアセンターなごみ」を開所し,「メンタルクリニックなごみ」と緊密に連携して,アウトリーチ主体の地域精神保健福祉事業を展開することとなった.「相馬広域こころのケアセンターなごみ」は,福島県こころのケアセンターの相馬センターを委託され,また福島県の震災対応型アウトリーチ事業を受託して,仮設住宅や借り上げ住宅で生活する被災者,地域で生活する精神疾患当事者・家族,地域住民など,相双地域の多くの人々のこころの健康を守り増進するための事業を行ってきた.
 平成25年度日本精神神経学会精神医療奨励賞を授与いただき感謝申し上げたい.今回の受賞は東北全体への激励と受けとめ,引き続き東日本大震災・福島第一原発事故からの復興と精神科医療の再生,被災者のメンタルヘルス増進を目指して努力を継続する決意をしている.福島県の理解とサポートをはじめ,全国,世界の多くの方々からの御支援に感謝申し上げる.

索引用語:東日本大震災, 福島第一原発事故, 精神保健, こころのケアなごみ>
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