精神神経学雑誌

116巻5号 掲載論文ハイライト

進行性核上性麻痺(PSP)は、前頭側頭型認知症と酷似した臨床像を示す場合がある。疾患特異性の高い眼球運動障害が病初期に出現することは少ないため、人格変化や行動障害が目立つ場合にはPSPの臨床診断が困難となる。しかし、前頭葉症状の特徴やMRIにおける中脳所見の経時的評価により診断精度を高められる可能性がある。長年にわたり前頭葉症状が優勢であったPSPの1臨床例が有益な示唆を与える。
筆者は広瀬の「逃避型抑うつ」、松浪の「現代型うつ病」、樽味の「ディスチミア親和型うつ病」の三類型がうつ病といえるかどうかを精神病理学的に検討した。うつ病は理由なき生命性の停滞を示す疾患であり、その本質は症状・経過・接触の三側面における異質性である。それらを欠く点から、これらはうつ病ではなく逃避型抑うつ体験反応(神経症)であると考えられる。
特集 | 378-409頁
粟田主一, 他
本特集では、認知症診療システムの構築と精神医学の貢献というテーマのもと、「認知症診療の枠組み」、「認知症診療における精神科の役割」、「認知症患者を支える地域ネットワーク―熊本モデルにおける実践を通して―」、「認知症の地域生活のための循環型医療介護連携システムへ向けて」という4つについて論じる。

このウィンドウを閉じる

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology