精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

社交不安障害のグループ認知行動療法について、待機期間(A)、治療期間(B)、追跡期間(A)の3つの状態を比較するABAデザインで治療効果を検証した。私たちのプログラムで治療した患者は、待機期間中には通常療法にもかかわらずほとんど症状の変化はなく、認知行動療法によって症状および社会機能が改善し、治療終結後もその改善は維持された。
日本の精神科急性期医療における隔離・身体拘束施行時間の実態、およびその施行時間に影響する患者特性を明らかにすることを目的とした。施行時間の中央値は、それぞれ204時間と82時間であった。隔離時間については、F1診断の患者とその他(F40~F99)がF2診断に比べて短く、他害行動の理由で開始されるものが長いという結果であった。
資料 | 813-824頁
賀古 勇輝,他
統合失調症患者と主治医を対象として病名告知状況に関する多施設調査を行った。患者529名の病名認識状況は、「統合失調症」と回答した患者が55.2%、「精神分裂病」3.2%で合わせて58.4%、その他の病名9.5%、病名を知らないと答えた患者17.4%、無回答14.7%であった。無回答の患者を除外すると、「統合失調症」または「精神分裂病」と認識している患者の割合は68.5%であった。
特集 | 825-872頁
岡田 剛,他
本特集では、「精神疾患の新しいメカニズムを検討する」というテーマのもと、「うつ病の脳内メカニズム―Functional MRIを用いた検討―」、「免疫系と精神疾患─BDNFと細胞内Ca2+シグナリングの関与─」、「精神神経疾患の病態における酸化ストレスの役割」、「蛋白質品質管理機構と精神疾患─シグマ1受容体の関与について─」、「精神科治療による神経可塑性へのアプローチ─オートファジー概念の導入─」について論じる。
本稿は、精神科臨床においても有意義な「包括的な精神医学の概念」を構築していく上で、いかに最先端の生物科学や操作的診断基準に内在する考え方を活用、統合し、そして、その努力を若い世代に伝えていくべきか、について議論し、国際的な精神科医の養成について希望的展望をまとめている。

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