Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第3号

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特集 摂食障害を外来で効果的に治療する
外来診療における食生活管理―スマートフォン用アプリを介して―
山内 常生, 原田 朋子, 宮本 沙緒里
大阪公立大学大学院医学研究科神経精神医学
精神神経学雑誌 126: 202-209, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-033

 摂食障害の外来診療では,取り扱うべき課題が多岐に及ぶ.心理的問題に対する精神療法を中心に,学校や仕事などの社会活動への助言や摂食障害の心理教育,合併した精神疾患や身体的問題の管理と治療も必要である.さらに,患者自身が直面している食行動異常への指導も重要である.しかし,食生活指導を適切に行ううえで欠くことのできない患者の食生活の状況把握は簡単ではない.外来診療において患者が自己の症状をモニタリングするために利用する食生活日誌は,主治医が短時間で食生活の状況を詳細かつ正確に理解するには扱いづらく,誤った把握をすれば指導が的外れになるおそれもある.患者は,症状に翻弄されながらも,食生活を改善するための努力を日々重ねることが求められ,苦労の連続である.患者が治療や指導を信頼できなかったり,回復を自覚できなかったり,支援が得られないと孤独感を抱いたりすれば,治療意欲を維持することはより困難となり,予後を悪化させる通院の中断につながりかねない.このような診療上の問題に対応すべく,著者らは摂食障害患者のためのスマートフォン用食生活管理アプリケーションを開発した.本アプリでは,患者が写真画像付きで食事やその他の生活活動を詳細に記録できる.また,規則正しい食生活をめざして計画どおり活動できるよう支援する機能や,心理教育資料を定期受信する機能も備えている.治療者は,患者の記録を管理ツールにより即時的に共有でき,記録に対してコメントすることもできる.2021年1月より当院に通院中の患者に本アプリの利用を勧めてきたが,本アプリは,主治医による患者の食生活の正確な把握と食生活指導の助けになった.また,コメント機能による主治医と患者の交流は,治療関係を良好に保つことに貢献したと考えられる.本アプリが医師と患者間の情報共有だけでなく,治療関係をより深めるツールへと進化することを期待している.

索引用語:摂食障害, スマートフォンアプリケーション(スマホアプリ), 食習慣, 外来, 食事日誌>
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