Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第12号

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特集 さまざまな精神障害の「病識」をどのように治療に生かすか
境界性パーソナリティ障害の病識もしくは疾病認識と精神科治療―当事者と治療スタッフはどうしたら協働できるか?―
林 直樹
帝京大学医学部精神神経科学講座
精神神経学雑誌 119: 895-902, 2017

 精神障害をもつ人の疾病認識は,治療を進めるための重要な手がかりである.病識は,精神科臨床で重視されてきた疾病認識の1つであるが,もっぱら精神医学的理解に依拠していることなどの限界があるので,境界性パーソナリティ障害(BPD)のような疾病概念が十分確定していない障害の治療では,病識から離れて疾病認識について検討する必要がある.本稿では,BPD当事者の疾病認識に基づいて,精神科治療スタッフが当事者とどのように協働するべきかについて検討を行った.現状では,BPD当事者が強い苦しみを抱えて援助を求めても,精神科医療がその期待に十分応えられないことがしばしばある.他方,BPDの回復や治療効果についての知見が蓄積されつつあり,また,当事者による回復の報告やピアサポートの動きがみられるなどの変化が生じている.この情勢においてわれわれは,当事者の回復をめざして協働を進めるために,彼ら自身の疾病認識から出発して,精神科医療をどのように役立てるかを彼らとともに考えながら治療を進めることが必要である.

索引用語:病識, 疾病認識, 境界性パーソナリティ障害, 回復, 治療関係>
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