Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第6号

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特集 アルツハイマー病におけるSymptomatic Drugsの使い方と使い分け
Alzheimer病におけるSymptomatic Drugの有効性と副作用からみた評価
大石 智, 宮岡 等
北里大学医学部精神科学
精神神経学雑誌 118: 430-435, 2016

 Alzheimer病(AD)治療におけるsymptomatic drugの有効性は認知症症状の進行抑制とされている.だが国内臨床試験では認知機能評価において統計学的有意差を示したものの,1剤を除く3剤は全般臨床症状評価において統計学的有意差を示していない.海外では有効性を示す報告が多くある一方,評価自体が困難で限界が多いことを指摘する報告も少なくない.診療において医師が有効性を判断するには,認知症症状の進行が抑制されているかを判断する必要がある.だがADの症状は多様で生活環境や対人関係などから影響を受ける.症状が出現する時期は病期により一定の傾向があるものの,年単位で進行し個人差も大きい.そもそも進行抑制を測るためには標準的な進行速度と比べる必要があるわけだが,進行速度は個人差が大きく標準を見出しにくい.薬物療法は有効性がなければ中止すべきである.しかし有効性の判断が難しいので,有効性がなかったとしても漫然と処方されやすくなる.副作用という点で考えると,コリンエステラーゼ阻害薬では消化器症状,精神神経症状,錐体外路症状,循環器系症状などが代表的である.貼付剤はかゆみを生じることがある.NMDA受容体拮抗薬もさまざまな副作用が生じることがある.AD患者は心身の変化を自覚し周囲に伝える能力が低下していることが多い.このため副作用の発見は遅れやすい.副作用による身体症状が活気のなさや焦燥として現れると,副作用がADの進行によるものとして,あるいは行動障害や心理症状として誤解されやすくなる.Symptomatic drugが4剤になり,使い分け論を聞く機会も増えた.だが使い分け論以前に使う必要性を再考する必要がある.

索引用語:アルツハイマー病, 症状改善薬, 有効性, 副作用, 評価>
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