2012年6月18日,厚生労働省の認知症施策検討プロジェクトチームは,今後の認知症医療・介護のあり方に関する方針を明らかにし,同年9月5日にはこれに基づき「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」を示した.報告書の冒頭で,厚生労働省は認知症になっても地域生活を継続できる社会を理念として示した.筆者はこの方向性はまさに「地域包括ケア」のめざすところと一致するものと考えている.その「地域包括ケア」という文脈の中で,認知症の人の医療における精神科クリニックの役割を,精神科病院への入院を可能な限り回避することと筆者は位置付けた.そのためには診断・BPSDの薬物治療および非薬物治療に関して精神科医としての機能を十分に発揮することが求められる.加えて,当院においては,身体管理や身体合併症治療も必須と考え,実践している.そして,これらのことが実効的に行われるには,多職種協働は必須である.
認知症の人の医療における精神科クリニックの役割
大井戸診療所
精神神経学雑誌
118:
78-83, 2016
<索引用語:オレンジプラン, 地域包括ケア, 精神科クリニック, 多職種協働>