安静時機能結合は,脳全体の機能的ネットワークを時間的に同期した安静時の自発的なBOLD(blood oxygenation level dependent)活動を用いて測定する非侵襲的な機能的イメジーング法である.近年,うつ病の機能的ネットワークの異常に関してさまざまな進展がみられているが,これらの脳情報が実際の診療場面で診断や治療で利用されることはない.そこで,本稿では,うつ病の認知制御,サリエンス,デフォルトモードなどのネットワークの安静時機能結合の異常について述べ,さらに,これらの機能結合パターンの違いを用いたうつ病の判別(診断)の試みについて紹介する.次に,脳活動パターンをfMRIで撮像し,リアルタイムにフィードバックすることで脳活動パターンを制御することを学習するfMRIニューロフィードバックについて紹介し,うつ病でこれまでに行われた研究成果について概括する.最後に,うつ病の機能結合の異常を標的としたより効果的なニューロフィードバック開発のための将来展望について述べる.現時点ではうつ病の診断や治療に脳機能画像手法を利用することは現実的ではないが,将来的にはこれらの手法が診断や治療の道具として使われる日が来ることを期待している.
うつ病の神経回路病態に基づく診断・治療法の開発
広島大学大学院医歯薬保健学研究院精神神経医科学
精神神経学雑誌
119:
332-338, 2017
<索引用語:うつ病, バイオマーカー, ニューロフィードバック, fMRI, 機能結合>