発達障害への治療の1つとして,心理社会的治療が注目されている.この背景には,注意欠如・多動症(ADHD)への薬物療法の普及という医学的側面だけでなく,保健・教育・福祉面での発達障害児・者への支援が施策としても進んできており,包括的かつ長期的な治療・支援が求められてきていることがある.本稿では,まず国内における発達障害支援の動向を述べたうえで,著者らによる児童精神科医療機関でのニーズ調査について紹介した.次に国内外の診断治療ガイドラインでも推奨されているペアレントトレーニング(PT)やソーシャルスキルトレーニング(SST)を概説し,特にPTの基本プラットホームの必要性を強調した.さらに,家庭や学校,職場などでの環境調整の例についても述べたうえで,心理社会的治療の目標を提案した.
発達障害の心理社会的治療―ペアレントトレーニングとSSTを中心に―
奈良教育大学特別支援教育研究センター
精神神経学雑誌
118:
417-423, 2016
<索引用語:発達障害, ペアレントトレーニング, SST, 心理社会的治療>