近年,精神科医療を取り巻く制度や政策が大きく変わりつつある.平成25年度からは,これまでいわゆる4疾病5事業として都道府県で運用されてきた医療計画に精神疾患が追加され,5疾病5事業として運用が開始された.平成25年6月13日には,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律(精神保健福祉法)が成立し,原則,平成26年4月1日に施行された.また,精神障害者福祉については,平成28年4月を目途に障害者総合福祉法の見直しを控えている.精神保健福祉法をはじめとする医療政策と精神科医療は密接に結びついているものの,一線で研鑽を積む特に若手の精神科医が,そうした政策の仕組みや動向を把握する機会はそう多くはないと考えられる.そこで,本稿では,厚生労働省で精神科医療をはじめとする医療政策に携わってきた立場から,①厚生労働省における精神科医療政策の立案・成立までのプロセス,②その担い手である「医系技官」の役割について紹介し,③近年の大きな制度改正として精神保健福祉法改正の概要を解説する.
第110回日本精神神経学会学術総会
若い精神科医に知っておいてほしい精神科医療の課題―厚生労働省医系技官からみて―
元厚生労働省社会・援護局精神・障害保健課課長補佐
精神神経学雑誌
117:
556-561, 2015
<索引用語:精神科医療, 精神科医, 医療政策, 精神保健福祉法, 厚生労働省医系技官>