Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第7号

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資料
自然災害の諸要因が高校生の心理状態に及ぼす影響の検討―東日本大震災から1年4ヵ月後の高校生実態調査―
船越 俊一1), 大野 高志1), 小高 晃1), 奥山 純子2), 本多 奈美2), 井上 貴雄5), 佐藤 祐基5), 宮島 真貴4), 富田 博秋3), 傳田 健三5), 松岡 洋夫2)
1)宮城県立精神医療センター
2)東北大学病院精神科
3)東北大学災害科学国際研究所災害精神医学分野
4)北海道大学大学院医学研究科精神医学分野
5)北海道大学大学院保健科学研究院生活機能学分野
精神神経学雑誌 116: 541-554, 2014
受理日:2013年9月26日

 東日本大震災発生後のメンタルヘルス・アウトリーチ活動の一環として,心理的支援に役立てるため,宮城県南部(沿岸部)の3つの高校の生徒のうち記名式調査に同意が得られた生徒計1,973名に対して質問紙による調査を行い,1年4ヵ月が経過した高校生の心理状態の実態を把握するとともに自然災害の諸要因が高校生の心理状態に及ぼす影響を検討した.調査票には,心的外傷後ストレス反応(PTSR)の指標として東日本大震災の被災体験に対する出来事インパクト尺度(IES-R)の他,うつ病評価尺度(QIDS-J),Zung不安自己評価尺度(SAS),およびレジリエンス尺度(CD-RISC10)を使用した.解析にはSPSS20.0Jを用い,各調査票項目に関して,生徒個別の被災体験,在籍する学校や学年などの諸要因が,被災した高校生の心理状態に与える影響を分析した.3校の生徒全体を通して高い抑うつ傾向,不安傾向が認められた.深刻な被災を体験した生徒は,そうでない生徒に比べPTSRが有意に高く,抑うつ,不安傾向には有意な差を認めなかった.3つの高校間で比較すると,使用不能になって仮設校舎で授業を行うA高校が他の2校に比して有意に高い抑うつ傾向と不安傾向,低いレジリエンスが認められた.不安傾向の高さは学年の上昇と正の相関関係が認められた.震災が子どもに与える影響は,年少児ほど大きいといわれるが,高校生年代もまた大きな影響を受けていることが示された.特に学習環境が深刻な被災を受けているほど,抑うつや不安が高まっていた.加えて,学年が上がるとともに不安が高まる傾向が認められ,被災地における人生の進路選択に直面するためである可能性が考察された.

索引用語:東日本大震災, 高校生, PTSR, 抑うつ症状, 不安症状>
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