精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 0333-0342頁
山縣 文,青木 悠太
自閉スペクトラム症(ASD)と定型発達それぞれにおいて同胞ペアを対象とすることで,疾患発症に関与する効果と疾患発症の遺伝的脆弱性に関する効果(エンドフェノタイプ)の分離を試みた.社会脳領域の皮質溝の深さがASDエンドフェノタイプを鋭敏に反映しており,さらにASDエンドフェノタイプとASD発症に関する神経基盤の分離に成功した.
児童精神科の現場では近年,逆境的養育環境で育つ子どもへの介入が急増している.こうした子どもは他者への攻撃性と自己破壊性の混合した混乱状態をしばしば呈する.その治療は「攻撃性や自己破壊性から保護されること」「お世話され育まれること」「自ら漸進し能動的に自己を育むこと」という3種の治療的局面を繰り返し経験することへの取り組みである.
原著 | 0357-0369頁
板橋 登子,小林 桜児,黒澤 文貴,福生 泰久,吉松 尚彦,西村 康平,岩井 一正
本研究では依存症外来初診患者を対象に,小児期逆境体験が不信感,被拒絶感,ストレス対処力の低下を介して物質使用障害の重症化に至るという信頼障害仮説の検証を試みた.小児期逆境体験の累積は不信感を強め,アルコール群では被拒絶感を緩和させるために,薬物群では低下したストレス対処力を補完するために,物質使用障害がより重症化する傾向が示唆された.
特集 | 0370-0393頁
岡崎 大介,野口 正行,松本 和紀,林 みづ穂,小原 聡子,福地 成,原 敬造
本特集では,「近年の自然災害から学ぶ精神保険医療支援の実際―身近な地域での災害発生に備えて―」というテーマのもと,「北海道胆振東部地震における災害時精神保健医療活動」,「岡山県におけるDPAT活動について」,「東日本大震災を通して考える災害での支援と受援―宮城での経験から―」について論じる.

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