精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

心因性非てんかん性発作(PNES)はさまざまなてんかん発作類似の症状が出現する.PNESの診断には発作症候学や脳波などの神経学的考察,治療には精神医学的考察がそれぞれ必要となる.診断から治療へのシームレスな連携が必要であり,包括的PNES診療の実践のためには精神科医はPNESやてんかんに関する知識をアップデートし,自身のPNESに対する誤解や偏見を解消する必要がある.
精神障害者の刑事責任能力に関する裁判判断の傾向を知る目的で最近の4事例の第一審判決を分析した.判決は精神障害の罹患及び犯行時における幻覚・妄想の存在を認める一方で,症状が犯行に与えた影響は大きくないとして完全責任能力を認定し,死刑判決を下した.事例に共通する特徴的な判断構造及び責任能力をめぐる精神医学と法律の議論の現状を批判的に検討した.
著者らは,1980年1月から2019年2月の,触法者の家族以外が3名以上死亡した殺人事件のうち,精神病性症状が犯行に関連したと判決で認められた死刑求刑事件11例の裁判例を調査した.その結果,2010年以降,精神障害が動機には影響したが,犯行自体は正常心理に基づいていたとするなど,動機と犯行自体を切り離して考察して完全責任能力とした裁判例が続いていた.
特集 | 0135-0166頁
藤澤 隆史,島田 浩二,滝口 慎一郎,友田 明美,稲葉 啓通,石坂 好樹,小川 素子,高橋 ふき,河原 理恵,越後 顕一,楠田 千佳,高 祥也,田槇 里奈,志田 沙恵子,陶山 寧子,亀岡 智美
本特集では,「子どもを虐待したくてしているわけじゃない!―逆境体験に精神科医療はどう向き合うか―」というテーマのもと,「児童期逆境体験(ACE)が脳発達に及ぼす影響と養育者支援への展望」,「児童心理治療施設における発達性トラウマ障害(Developmental Trauma Disorder:DTD)―子どもの言動の新たな評価の試み―」,「児童相談所の保護者支援―地域につないでいくために―」,「精神科医療におけるトラウマインフォームドケア」について論じる.

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