精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

症例報告 | 735-743頁
大久保 亮,橋本 直樹,草地 麻実,成田 尚,久住 一郎
43歳男性の統合失調症患者がclozapine投与開始から17年経過した後に拡張型心筋症を発症した.clozapine中止と同時に拡張型心筋症の標準治療を受けて心機能は回復した.本症例では心電図や胸部X線写真で異常所見を認めず,心エコー検査が拡張型心筋症の診断に有用であった.clozapine投与との因果関係,clozapine関連心筋症に想定される病態と循環器系モニタリングに関する考察を含めて報告する.
特集 | 744-770頁
笠井 清登,夏苅 郁子,熊倉 陽介,村井 俊哉
本特集では,「リカバリーの脳科学と支援ガイドライン」というテーマのもと,「リカバリーの意味とその科学」,「家族・当事者としての経験を通して見たリカバリー,そして精神科医として考えるリカバリーについて」,「質問促進パンフレットを用いたリカバリー志向の診療」,「リカバリー支援ガイドラインのあり方」について論じる.
特集 | 771-793頁
布施 泰子,大野 裕,藤澤 大介,中川 敦夫,佐渡 充洋,菊地 俊暁,田島 美幸,堀越 勝,岡野 憲一郎,藤山 直樹
精神科臨床はすべて治療関係のなかでなされる.しかしそれがそう簡単なものとでないことは,周知の事実である.精神科臨床の難しさも面白さもそこにある.本特集では,治療関係の困難に焦点を当て,「治療関係で困った経験,そしてそのときどう対処したか」でまず誰もがする経験を共有し,「個人スーパービジョンを用いた研修の可能性」,「米国における精神科レジデントトレーニング」,「後期研修医へのコンサルテーションの経験―TPAR,東大精神科における新しい試み―」と,それに対する対処について明らかにしていくことをもくろんでいる.
教育講演 | 794-800頁
芳野 浩樹
ヒトの高次脳機能は神経の電気活動および律動により構成されている.大脳皮質などの局所神経回路における興奮性神経伝達,抑制性神経伝達,神経細胞の活動電位がこの電気活動の基盤となっている.これらを踏まえて,神経細胞から電気活動を記録する技術を用いた基礎研究について紹介し,精神疾患との関わりについて触れたい.

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