陰性症状は治療抵抗性であり,表出の貧困と意欲・発動性の低下の2因子に分けられる.報酬予測や報酬の探索的行動などの障害が基盤にあり,未来に向かって行動を起こすことに困難がある.まだ確立された薬物療法はなく,心理社会的治療の効果も限定的である.希望を育み,低下していた自己価値の再編を目指すことは,こうした脳基盤の陰性症状にも役立つ支援である.
特集 | 195-227頁
加藤 進昌,五十嵐 良雄,他
本特集では,加藤が高機能発達障害の総論を論じ,次いで森田が職場での課題を産業医の視点から整理した.次いで医療機関における専門外来の実態を海老澤が,リワークプログラム内での専門プログラムを海老澤と横山が精神科医療での取り組みとして紹介した.最後に,鈴木が民間企業での就労支援の取り組みの紹介し,発達障害者の職場での全般的な課題を論じた.
筆者は,2011年に統合失調症者の家族であり自身も患者であったことを公表した.公表後に多くの患者・家族,非専門職の方々と会い,精神科医としても大きく変わった.「精神科医としてのリカバリー」とも言える筆者の変化や,当事者・家族の「生きた言葉」を大切にし,その強さに敬意を払う診療が「精神医療の未来」のために必要であることをお伝えする.