精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 887-892頁
大岡 治恵, 他
愛着障害と母親の気分との関連の検討のため,妊娠期と産後期に4回EPDS(抑うつの尺度)とMIB(愛着の尺度)を実施した.両尺度間に弱から中程度の相関がみられ,母子間の愛着は母親の気分状態と密接に関連していた.愛着と母親の気分状態の経過は様々であり,母親の抑うつ状態の経過を考慮に入れて愛着障害の分析が行われるべきであることが示唆された.
強迫症および関連症群(OCRD)は,強迫スペクトラム概念を基盤とし,DSM-5より新たに導入されたカテゴリーである.これは強迫症(OCD)を中心に,醜形恐怖症(BDD),ためこみ症(HD),皮膚むしり症(SPD),抜毛症(HPD)など,とらわれや繰り返し行為を中核症状とするもので構成される.今回,複数のOCRDの併存を認めた1例を経験したので,若干の考察を交え報告したい.
特集 | 902-927頁
加茂 登志子, 他
本特集では,「精神疾患をもつ女性の妊娠・出産を支えよう」というテーマのもと,「周産期うつ病―知識のアップデートとよりよい治療のあり方を探る―」,「統合失調症の人の恋愛・結婚・子育て支援」,「てんかんのある女性の妊娠・出産を支えるには?」について論じた.
児童虐待への曝露と様々な精神疾患や認知機能低下,脳形態や脳機能の変容との関連性があることは知られている.一連の知見から,単独の被虐待経験は一次的に感覚野(視覚野や聴覚野など)の障害を引き起こすが,より多くのタイプの虐待を一度に受けると大脳辺縁系に障害を引き起こすことが示唆される.最近わかってきた愛着形成障害の脳構造異常についても概説する.
Current Topics | 936-939頁
松原 三郎, 他
刑事責任能力鑑定は,精神障害を疑われている被疑者や被告人について,精神医学的診断(生物学的要素)を行い,さらに,事件当時の精神状態を明らかにし,理非善悪を判断しそれに従って行動する能力がどの程度に影響を受けていたか(心理学的要素)を明らかにしようとするものです.そこでは,正確な診断と丁寧な面接から事件当時の精神状態を明らかにする能力が求められます.

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