精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 813-819頁
太田 深秀,他
今回我々は14名の健常被験者にL-テアニンを0,200,400,もしくは600 mgの計4回,単回摂取をしていただき,内服後90分のPPIを測定した.その結果,200 mg,400 mgを摂取した際には,プラセボのみを摂取したときと比較してPPI抑制率に改善がみられた.このことからL-テアニンはある一定の濃度範囲においてPPIを改善する効果を示すことが明らかとなった.
心疾患のためwarfarin投与を受けていた70歳代男性がmirtazapine投与により鼻出血を来たし,PT-INRが1.21から7.93と著明に延長したが,両剤中止により消失および正常化した.Warfarinの併用注意薬物は25の薬効分野に及ぶ.本症例報告は両薬剤を併用する高齢者における薬物相互作用の厳重な監視の必要性を示すと考える.
当院の統合失調症群の死亡年齢を調査したところ,非精神疾患群より約20歳低く,死亡2年前から有意なQT延長発現がみられた.更に,統合失調症群と人間ドック受診群の年齢階層別平均QT値は正の相関を示し,統合失調症群の平均QT値は有意に高い傾向が認められた.本稿では,統合失調症患者の死亡に及ぼす因子について,QT延長との関連を中心に後方視的に検討した.
特集 | 837-861頁
加藤 正樹,他
DSM-5日本語版が上梓されてから1年が経過した.本特集では,その是非に関する検討は一旦置いておき,「DSM-5のインパクト─臨床・研究への活用と課題─」というテーマのもと,“双極性障害とうつ病”,“統合失調症”,“不安症群”について,DSM-IVからの変更点と臨床・研究への活用と課題について概説する.
一部の精神疾患の機序は分子生物学的解析により解明されつつある.自閉スペクトラム症に対しては,その障害が“untreatable”であるという認識から,その生物学的な治療法開発に高い関心が払われてこなかった.ところが,分子生物学的アプローチにより自閉スペクトラム症の病態は明らかになりつつあり,薬物療法の可能性まで示唆されるほどになっている.
平成27年12月より,従業員50人以上の事業場にストレスチェックの実施が義務づけられる.本制度は,有効に機能すれば労働者,企業両者にとって大きなメリットをもたらす制度であるが,同時に,さまざまな課題や問題点を含む.現状でこの制度が実施されれば,大きな混乱が生じる可能性が高く,趣旨を周知し職場メンタルヘルスの改善に寄与する制度にしなくてはならない.

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