Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文全文

第120巻第7号

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教育講演
第113回日本精神神経学会学術総会
リカバリーの時代とSST(生活技能訓練)
丹羽 真一
福島県立医科大学会津医療センター精神医学講座
SST普及協会会長
精神神経学雑誌 120: 592-600, 2018

 精神科治療のゴールは2つの「リカバリー」にあると考えられている.1つは「臨床的リカバリー」で,社会参加が実際に達成されていることである.もう1つは「パーソナル・リカバリー」で,当事者が積極的に社会参加する生き方を身につけていることである.生活技能訓練(SST)は対人コミュニケーションと日常生活の力を増す支援方法で,社会参加・「リカバリー」を促進することを目的としている.リカバリーはリハビリテーション,ノーマリゼーション,エンパワメントの包括的枠組みで進められる必要がある.これまで,SSTは基本訓練モデル,問題解決技能訓練,モジュールなど多様な伝統的な形で行われており,主として「臨床的リカバリー」をめざして行われている.ここではSSTを「パーソナル・リカバリー志向的」に行うことを提案したい.この目的を達成するためには,内発的動機づけ,認知機能,症状の主観的意味に注目する必要がある.第1に,SSTは当事者の希望に基づき,これまで以上に「希望志向」で行われるべきである.第2に,当事者がSSTに主体的に参加することを強めるさまざまな工夫を「共同創造」(co-production)の形で追求することである.第3に,生活技能の効果的学習を進めるSSTを認知機能への介入とともに行うことである.第4に,SSTは症状自己管理の領域をもっとカバーするように発展させられるべきである.患者の症状に対する態度は症状の主観的意味によりバイアスがかかり,客観的態度が妨害され,モジュールの価値がしばしば損なわれる.そこで,症状の主観的意味を扱うことにより既存のSSTモジュールを補完することが求められている.べてるの家の当事者が始めた「当事者研究」はこうした補完のモデルとなるものである.以上の4つの視点から強化されたSSTを「e-SST(empowered-SST)」と呼ぶことにしたい.最後にSSTは地域生活支援のコア技術として多領域で活用されることが期待されている.

索引用語:精神疾患, パーソナル・リカバリー, 生活技能訓練(SST), empowered-SST, 共同創造>

はじめに
 社会生活技能とは「自分の気持ちやニーズをほかの人に伝えていくあらゆる技能」で,それにより,私たちは毎日の生活で人とかかわりながら,個人目標を達成している.慢性の精神障害をもつ人たちの場合,社会生活技能が不十分なために生活に困難を抱える場合が多く,その結果として再発に至ることも多い.生活技能訓練〔または社会生活技能訓練(Social Skills Training:SST)〕は対人関係を中心とする社会生活技能のほか,服薬自己管理・症状自己管理などの疾病の自己管理にかかわる日常生活技能などを高め,精神障害をもつ人たちをはじめ社会生活のうえでさまざまな困難を抱える人たちの自己対処能力を高め,自立を支援する方法である9).わが国では,1970年代後半~1980年代にかけて坂野雄二,山上敏子,川室優,皿田洋子らが精神障害をもつ人たちを対象としてSSTによる治療を開始していたが,1988年にUCLAのR. P. Liberman教授が東大客員教授として招聘され,東京や長崎などでワークショップを開催してから全国で本格導入が始まった.その結果,1994年には診療報酬に「入院生活技能訓練療法」が組み入れられた.SSTは基本訓練モデル,問題解決技能訓練,服薬自己管理モジュールなどの形で行われてきた.1988年のLiberman教授のワークショップ以来,すでに約30年が経過し,慢性の精神障害をもつ人たちへの支援のあり方は当時と大きく変化してきた.とくに近年は慢性の精神障害をもつ当事者のリカバリーが強調されるようになっている.わが国の精神科医療における本格的普及から30年を経た今日,SSTは当事者のリカバリー支援の基本的な方法として新たな発展が進んでいる.ここではSSTの新たな展開を紹介する.

I.リカバリーへの関心の高まり
 慢性の精神障害をもつ人たちへの支援のあり方が変化し,リカバリーをゴールに据えるという支援のあり方になってきていることにまずふれておきたい.リカバリーは文字通り「回復」であり,「回復」がゴールであることは今に始まったことでないのは無論である.誰の視点から見ての「回復」か,「回復」とは何なのかが変化しているのである.支援のあり方の変化を次のようにまとめるとわかりやすいと思う.視点について言えば古くは治療者視点であったが,現在では治療者,当事者の複眼的視点から見ての「回復」であり,内容については以前は「症状の回復(あるいは寛解)」であったが,現在はそれにとどまらない「社会参加」であり,当事者視点で言えば「障害の有無にかかわらず,一人の社会人として,社会参加する生き方を身につけられるようになること」である.治療者視点から見ての「社会参加」を「臨床的リカバリー」,当事者視点から見ての「社会参加する生き方を身につける」ことを「パーソナル・リカバリー」と区別して呼ぶようになっている16).このようにリカバリーへの関心が高まり,リカバリーを治療ゴールに据えるという支援のあり方に変化してきている.
 Libermanら8)は臨床的リカバリーを,①症状の重症度が軽度より良好,②就労あるいは就学している,③自立した生活をしている,④社会的人間関係を維持している,の4つの条件を2年間以上満たしている場合とすることを提案している.Jääskeläinen, E.ら7)は,時代も地域も違う多様な当事者のリカバリー率をまとめると平均リカバリー率は16.4%であると述べている.この数字はいささか落胆させる数字であるが,初発患者を対象としたカナダ,オーストラリア,米国での最近の研究では治療開始2年後のリカバリー率は90%前後と報告されていることもみておかねばならない4)8).高いリカバリー率を報告している研究者はSST実施などリハビリテーションに熱心な人たちである.
 他方,当事者からは次のような意見が出されている.すなわち,「精神病や精神障害から回復した人は,病気が軽かった人だけじゃないですか.リカバリーは重い精神障害における回復です.『から』ではなく,『における』なのです.精神障害をもちながら,ふつうの人として元気に生きるという考え方,生き方を身につけられるようになることがリカバリーなのです」と.この意見はパーソナル・リカバリーとはどういうことかを説明している.パーソナル・リカバリーは精神障害をもつ人たちが将来への希望を抱きながら,他者とのかかわりをもって生活し,人生/生活の意義を感じられる充実感をもてるようになることであり,本人の価値意識に根ざした主観的な満足度の達成である.パーソナル・リカバリーは,このようにリカバリーの主観的な側面を指すからといって,その達成を当事者のみに委ねるべきではない.治療者も当事者がパーソナル・リカバリーを達成できるよう,ともに努力すべきである.臨床的リカバリー率の平均が16.4%というのであれば,リカバリーの客観的側面の達成だけに努力を傾注するというのでは片手落ちと言わねばならない.

II.リカバリーと認知機能障害
 臨床的リカバリーの達成を左右する大きな要因として認知機能障害が挙げられている.図1はNuechterlein, K. H.ら11)によるレビューで,就労・就学など長期的社会生活の転帰を左右する要因と,諸要因のなかで長期転帰の要因の分散の半分以上を認知機能障害の要因が占めていることを示す図である.病前の社会機能,環境要因,陰性症状・解体症状なども社会生活の長期転帰に関連するが,それらよりも注意,作業記憶,言語記憶,処理速度などの認知機能(社会認知機能に対して神経認知機能と呼ばれる)の関連が大きいことが報告されている.Harvey, P. D.とSharma, T.5)によれば,統合失調症をもつ人たちの場合,神経認知機能のなかでは言語記憶,実行機能,覚醒度,運動速度(処理速度),言語流暢性が重度に障害され,転導性,再生記憶,ワーキング・メモリー(作業記憶)が中等度に障害されているとまとめられている.Green, M. F.ら3)は,地域での日常生活,対人問題解決,心理・社会的スキルなど実生活の諸機能を支える神経認知機能は,実行機能,言語記憶,覚醒度などの神経認知機能であるとまとめているが,このGreenら,HarveyとSharmaを総合すると,統合失調症をもつ人たちの場合,実生活の遂行に重要な神経認知機能が重度ないし中等度に障害されているということになる.だとすると臨床的リカバリーの達成のためには,認知機能障害の改善(cognitive remediation),あるいはその障害の補完を考えることが必要となる.

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III.SSTは認知機能障害を前提として工夫されている技法
 認知機能障害の改善を通して,あるいは認知機能障害を補完して臨床的リカバリーを達成しようとするとき,改善の具体的方法として薬物療法および認知矯正療法を,補完の方法としてSSTを挙げることができる.統合失調症など慢性の精神障害をもつ人たちの場合,社会生活技能が不十分なために生活に困難を抱える場合が多く,その結果として再発に至ることも多いと最初に述べた.社会生活技能が不十分な理由としては,認知機能障害のために学習が進まないこと,および経験不足などが挙げられよう.SSTは認知機能障害の結果生じる社会生活技能の不十分さを補完することにより生活の困難を軽減することをめざしている.
 認知機能障害のために学習が進まないので社会生活技能が不十分である人に,SSTというトレーニングにより社会生活技能を学習してもらおうとすることは,矛盾しているように感じられるかもしれない.この点はSSTの基本にかかわる問題であるので,繰り返しになるかもしれないが改めて説明しておきたい.Tulving, E.14)によれば人間の記憶機能には手続き記憶,知覚表象システム,意味記憶,一次記憶(作業記憶),エピソード記憶という5つのシステムがあり,それらが有機的に統合されて一人の人間の記憶機能として働いているとされる.
 記憶機能に障害がある統合失調症の場合でも,5つのシステムは一様に障害されているわけではないことに注意が必要である.すなわち,①手続き記憶は他の記憶システムが障害されている場合でも保たれるか,障害の程度が軽度である,②知覚表象システムは健常者と同程度か,より増強している,③意味記憶が障害されており,新しい知識を意味ネットワークに組み込む際に効果的に体制化できない,④一次記憶(作業記憶)が障害されており,弛緩した連想や思考の不統合が原因の可能性がある,⑤エピソード記憶が障害されており,生活史の時間的順序づけが混乱している.要約すると手続き記憶,知覚表象システムは保たれるが,他方では意味記憶,一次記憶,エピソード記憶は障害される,ということになる.そこで,SSTは障害を免れるか,軽度である手続き記憶を活用して新たな学習を進めるようにするのである.実際,手続き記憶に依拠した学習である「鏡映文字読字課題」では,図2に示すように統合失調症群も健常対照群と同じ読字時間短縮を示した13).手続き記憶に依拠した学習は統合失調症をもつ人たちにおいても有用であることが確かめられ,SSTは認知機能障害があることを前提として工夫されていることがわかる.
 また,認知機能障害そのものの改善をめざす方法として薬物療法と認知矯正療法が挙げられるが,ここではSSTについて述べるのが主目的であるので紙幅の都合から詳細は割愛する.

図2画像拡大

IV.リカバリーをめざす総合戦略
 前章で述べたことは主に臨床的リカバリーにかかわることである.前記したように,リカバリーは臨床的リカバリーとパーソナル・リカバリーの両側面が考えられるようになっており,治療者にはその両側面の達成を図る総合戦略をもつことが求められている.それではパーソナル・リカバリー達成にはどのような条件が必要とされるであろうか? Ragins, M.がその著書「ビレッジから学ぶリカバリーへの道」12)で述べているように次の4条件が必要である10).①目に見える現実的なビジョンとしての希望がある,②自分の可能性と能力を感じられる小さな成功体験を積みエンパワメントされている,③失敗や過ちがあってもそれから学んで再出発する「自己責任」の考え方がもてる,④毎日の生活のなかで普通に役割を引き受けていて自分の役割を感じられる,である.パーソナル・リカバリーの達成に向け,当事者がこの4条件を満たせるように支援することが治療者に求められる.
 SSTは,社会生活技能のほか疾病の自己管理技能にかかわる日常生活技能などを高め,精神障害をもつ当事者の自己対処能力を高め自立を支援する方法である.SSTを実施することにより当事者は自分の能力を感じられる小さな成功体験を積みエンパワメントされ,前にはうまくできなかったことでも「こうすればやれる」と再挑戦する勇気と自己責任の考え方をもてるようになり,「SSTセッションに参加している『あの人のように』やれるようになりたい」と小さくても希望をもてるようになることがめざされる.そして,実生活における宿題として,小さくともよいので何か役割を引き受けてもらうのである.このようにSSTは4条件を満たすことによりパーソナル・リカバリー達成をめざした支援方法にほかならない.SSTは前述したように手続き記憶に依拠した認知行動療法として確実に学習を進められる技法であり,臨床的リカバリーとパーソナル・リカバリー支援をめざす方法である.しかし,学習方法の部分が前面に出ていて,臨床的リカバリーとパーソナル・リカバリー支援をめざすものであるという認識が薄い恨みがある.リカバリーの時代こそSSTが求められるので,時代の要請に合わせて活用されるようにSSTを発展させることが求められている.

V.リカバリーの時代のSST
 「リカバリーの時代」のSSTに必要性が強調されるようになっていることに共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)がある.これは新しい治療者-患者関係のあり方を示す用語である.パターナリスティックな従来型の治療者-患者関係に代わるあり方としてインフォームド・コンセントに基づく治療者-患者関係が強調されるようになったが,表1にあるようにインフォームド・コンセントに基づく関係では情報の流れは医師→患者の一方向であり,決定は患者単独で行われる点で従来型と変わらない.情報の流れを医師↔患者のように双方向とし,決定を医師+患者の共同で行う新しい関係がSDMであり,パーソナル・リカバリーも重視される「リカバリーの時代」における望ましい治療者-患者関係とされる.
 リカバリーの時代のSSTに求められることの1つはSDMの治療者-患者関係である.もともとSSTは,「こうなりたい」「こういうことができるようになりたい」という当事者の希望から出発することが強調されるが,この基本を一層明確にする努力が求められる.すなわち,SSTをグループで基本訓練モデルとして行っていると,セッションは参加者一人一人の希望から出発するという認識が薄れがちとなることを反省して,参加当事者個別のアセスメントを行い当事者個別の希望をもとに,当事者と治療者が共同で目標設定をしてSSTを実施するということである.
 リカバリーの時代のSSTに求められることの2つ目は本人の内発的動機づけ,SSTセッションへの主体的参加の尊重と強化である.これは1つ目の繰り返しに聞こえるかもしれないが,1つ目がSSTを実施する治療者の側の課題であるのに対し,2つ目は参加する当事者の側の課題であるという違いがある.もっとも2つ目は当事者の側の課題に焦点をあててはいるが,課題遂行は治療者と当事者の共同によりなされなければならない.その方法は,動機づけ面接の採用,当事者が抱える問題への自己対処の気運の涵養である.自己対処の気運の涵養のモデルとして,作業所「べてるの家」の当事者研究を挙げることができる.向谷地ら15)は次のようにこの点を説明している.「SSTがべてるで広まったことが当事者研究を生み出す基礎となった.SSTは自分を助ける道具で,べてるの事業・活動のなかで生まれる問題をSSTで当事者が解決してきた.SSTが当事者の中に普及し,当事者の生活に馴染み,『治療』とか『援助』とかいった専門家の立場からの硬い言葉が,当事者の実感と主観の中で磨かれて自然な形で生活に定着すると同時に,『当事者研究』が,当事者自身の症状の自己管理や再発の注意サインを把握するという作業から発展的に変化を遂げた.」ここには当事者が自分の問題への自己対処の力を高めようと主体的にSSTを行っている姿が描かれている.SSTに参加する内発的動機づけを高める方法として,ひだクリニックのSSTで行われている「プロデュース大作戦」もよいモデルである6).月に1回のプロデュース大作戦では,例えば悲劇のヒロインのエピソードをみんなで考えハッピーエンドにしていくストーリーを「プロデュース」するもので,一種の問題解決技能訓練である.「苦しい」をテーマにしたセッションに参加した当事者は,「似たような苦しいことがあったとき,今日出されたアイディアを活用できたらいいなあと思います」と述べ,セッション参加の動機が高まったことを認めている.
 リカバリーの時代のSSTに求められることの3つ目は,非機能的な自己認知(defeatist beliefsなどのネガティブな自己認知)への介入と,社会的認知・メタ認知への介入を統合して行うことである.他者との関係において自分が役割を果たせていないという自己についての社会的認知,非機能的な自己認知はパーソナル・リカバリーが未達成であることを示し,その結果である社会参加への後ろ向きな姿勢はSSTがめざす方向に逆行するからである.
 リカバリーの時代のSSTに求められることの4つ目は認知機能の改善や認知リハビリテーション(cognitive remediation)と結びつけることである.Bowie, C. R.ら1)は12週間の認知矯正法,12週間のSST,両者の併用の3群間を比較した.その結果,社会生活機能については,SST単独群,併用群が治療終了時点で改善し,その効果は終了後12週でも持続していた.併用群のほうがSST単独群より改善効果は大きかったと先駆的研究結果を報告している.
 リカバリーの時代のSSTに求められることの5つ目は,SSTを地域生活支援のコア技術として位置づけ,訪問サービスや家族心理教育・家族支援などと統合したSSTとして実践することである.わが国の精神科医療のあるべき姿として,精神障害をもつ人たちを入院ではなく地域で支える方向が定められている.再三述べているように,SSTは精神障害をもつ人たちをはじめ,社会生活のうえでさまざまな困難を抱える人たちの日常生活技能,自己対処能力を高め,自立を支援する方法である.コミュニケーションの力,日常生活における問題解決の力を増し,社会関係を作る力を増すSSTは,当事者の地域生活支援のためのいろいろな方法に共通する基礎的介入方法でもある.SSTがそれ単独でなく,地域生活支援のさまざまな方法と一緒に用いられてこそSSTの真価が発揮されると期待される.

表1画像拡大

おわりに
 治療者と当事者とが共同創造により,臨床的リカバリーとパーソナル・リカバリーの両方を達成することがめざされる「リカバリーの時代」に,当事者の希望から出発して当事者の地域生活を支援する方法として発展してきたSSTは,その真価が問われている.時代のニーズに合ったSSTとしてさらに発展するためには,①参加当事者個別のアセスメントを行い当事者個別の希望をもとに,当事者と共同で目標設定をしてSSTを実施するという基本を一層強めること,②内発的動機づけ,SSTセッションへの主体的参加の尊重と強化を一層図ること,③非機能的な(ネガティブな)自己認知への介入,社会的認知・メタ認知への介入と統合して行うこと,④認知機能の改善や認知リハビリテーションと結びつけること,⑤SSTを地域生活支援のコア技術として位置づけ,訪問サービスや家族への心理教育・家族支援などと統合したSSTとして実践することが必要であると思われる.われわれはこのように強化されたSSTをempowered SST(e-SST)と呼んでおり,SSTをe-SSTとして発展させるよう努力しているところである.

 第113回日本精神神経学会学術総会=会期:2017年6月22~24日,会場=名古屋国際会議場
 総会基本テーマ:精神医学研究・教育と精神医療をつなぐ―双方向の対話―
 教育講演:リカバリーの時代とSST(生活技能訓練)座長:浅見 隆康(群馬県こころの健康センター)

 なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.

文献

1) Bowie, C. R., McGurk, S. R., Mausbach, B., et al.: Combined cognitive remediation and functional skills training for schizophrenia:effects on cognition, functional competence, and real-world behavior. Am J Psychiatry, 169; 710-718, 2012
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2) Charles, C., Gafni, A., Whelan, T.: Decision-making in the physician-patient encounter: revisiting the shared treatment decision-making model. Soc Sci Med, 49 (5); 651-661, 1999
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3) Green, M. F., Kern, R. S., Braff, D. L., et al.: Neurocognitive deficits and functional outcome in schizophrenia: are we measuring the "right stuff"? Schizophr Bull, 26; 119-136, 2000
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4) Harding, C. M., Zubin, J., Strauss, J. S.: Chronicity in schizophrenia: revisited. Br J Psychiatry Suppl, 18; 27-37, 1992

5) Harvey, P. D., Sharma, T. (丹羽真一, 福田正人監訳): 統合失調症の認知機能ハンドブック―生活機能の改善のために. 南江堂, 東京, 2004

6) 岩田 泰夫監修: プロデュース大作戦. シナリオで学ぶ基本技術と技術指導の実際 (シリーズDVDで学ぶ新しいSST, 第2巻). 中島映像教材出版, 新潟, 2008

7) Jääskeläinen, E., Juola, P., Hirvonen, N., et al.: A systematic review and meta-analysis of recovery in schizophrenia. Schizophr Bull, 39; 1296-1306, 2013
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8) Liberman, R. P., Kopelowicz, A.: Recovery from schizophrenia: a concept in search of research. Psychiatr Serv, 56; 735-742, 2005
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9) Liberman, R. P. (西園昌久総監修, 池淵恵美監訳, SST普及協会訳): 精神障害と回復―リバーマンのリハビリテーション・マニュアル―. 星和書店, 東京, 2011

10) 丹羽 真一編: やさしい統合失調症の自己管理, 改訂版. 医薬ジャーナル社, 大阪, 2013

11) Nuechterlein, K. H., Subotnik, K. L., Green, M. F., et al.: Neurocognitive predictors of work outcome in recent―onset schizophrenia. Schizophr Bull, 37 (Suppl 2); S33-40, 2011
Medline

12) Ragins, M. (前田ケイ監訳). ビレッジから学ぶリカバリーへの道―精神の病から立ち直ることを支援する―. 金剛出版, 東京, 2005

13) Takano, K., Ito, M., Kobayashi, K., et al.: Procedural memory in schizoprenia assessed using a mirror reading task. Psychiatry Res, 109; 303-307, 2002
Medline

14) Tulving, E. (太田信夫訳) : タルヴィングの記憶理論―エピソード記憶の要素―. 教育出版, 東京, 1985

15) 浦河べてるの家: べてるの家の「当事者研究」. 医学書院, 東京, 2005

16) 山口創生, 松長麻美, 堀尾奈都記: 重度精神疾患におけるパーソナル・リカバリーに関連する長期アウトカムとは何か? 精神保健研究, 62; 15-20, 2016

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