電気けいれん療法(ECT)はうつ病をはじめとする薬物治療抵抗性の病態にしばしば著効する精神科領域のニューロモデュレーションである.ECT後の覚醒時に生じる発作後錯乱は,転落や点滴自己抜去など外傷のリスクを高める注意すべき有害事象である.今回,重篤な発作後錯乱を術日朝のみのドネペジル投与で予防することができた若年男性症例を経験したので報告する.症例は20歳代男性でうつ病の加療目的に入院となった.抗うつ薬の変更や増強療法も種々試みられたが治療抵抗性であり,ECTを開始した.ECT初回施行時より発作後錯乱がみられ,四肢体幹拘束と追加の鎮静薬投与が必要な状態が続いた.発作後錯乱の軽減を期待して術当日の朝にドネペジル5 mgの内服を,適用外使用の説明と同意の下で投与したところ,発作後錯乱はみられなくなり,全10回の治療を完遂した.本症例ではECTの発作後錯乱に対して術日朝のみのドネペジル内服が予防に有効であった.先行報告ではすべてが50歳以上の症例に対し連日投与が行われていたが,本症例は若年で術日朝のみの投与でも有効であった.発作後錯乱が予防できることはECTの安全性を高め,臨床的に大きなメリットを生む.今後,有効性や安全性についてのさらなる検証が行われることが望ましい.
電気けいれん療法において,発作後錯乱の予防にドネペジルが奏効した若年うつ病の1例―ドネペジルの術日朝のみの投与での発作後錯乱の予防―
京都大学医学部附属病院精神科神経科
精神神経学雑誌
128:
161-167, 2026
https://doi.org/10.57369/pnj.26-029
受付日:2025年8月30日
受理日:2025年11月10日
https://doi.org/10.57369/pnj.26-029
受付日:2025年8月30日
受理日:2025年11月10日
<索引用語:ECT, 電気けいれん療法, ドネペジル, 発作後錯乱, せん妄>





