Advertisement第121回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第127巻第1号

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総説
うつ,不安,慢性疼痛の認知行動療法とイメージの書き直し技法
清水 栄司1)2)3)
1)千葉大学大学院医学研究院・認知行動生理学
2)千葉大学子どものこころの発達教育研究センター
3)千葉大学医学部附属病院認知行動療法センター
精神神経学雑誌 127: 3-9, 2025
https://doi.org/10.57369/pnj.25-002
受付日:2024年3月8日
受理日:2024年9月4日

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)と同様に,うつ病や不安症の患者においては,フラッシュバックのようなネガティブな侵入思考が,広義の意味でトラウマ的ともいえるような,初期のストレスフルな体験に由来して生じると考えられる.侵入記憶の苦痛を軽減するための認知行動療法の介入技法として,イメージの書き直し(imagery rescripting)が知られている.そのセッションでは,まず,うつや不安と関連するネガティブなイメージを同定し,そのイメージがどのようなトラウマ的な記憶につながるかを同定する.侵入イメージおよび侵入記憶は,うつ病や不安症の精神病理を維持するような中核的な認知の歪みと関連していることが多いので,その認知の歪みを明らかにし,認知再構成をすることで問題を整理する.しかしながら,認知再構成だけでは,患者の強く傷ついた感情の問題の解決にまでは至らないことが多いため,次の3つのステップから構成されるイメージの書き直しを行う.第1ステップは,トラウマ的な記憶を一人称で主観的に思い出し,言葉にする作業である.第2ステップは,トラウマ的な記憶をメタ認知的に,三人称で客観的に語る作業である.第3ステップは,トラウマ記憶を「シナリオの書き直し」をして自分の望むような結果に変える作業であり,すべてをコントロールできる力をもつ現在の自分がその記憶の場面に登場して,自分を攻撃してくる人物を指導したり,癒しの力をもつ現在の自分が当時の自分をいたわるような言葉や態度を示すことで,バッドエンドであった記憶をハッピーエンドの記憶に書き直すのである.この作業を通じて,侵入イメージや侵入記憶のつらさが改善されることが示されている.本稿では,著者らが,うつ病,パニック症,社交不安症,慢性疼痛で行ってきたイメージの書き直しに関する研究を紹介し,臨床でどのように役立てるかを概観する.

索引用語:認知行動療法, うつ, 不安, 慢性疼痛, イメージの書き直し>
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