Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第4号

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特集 精神科入院におけるアドボケイト制度の具体的な形
アドボケイト制度の具体的な姿―精神障害者の立場から―
桐原 尚之
1)全国「精神病」者集団
2)日本学術振興会特別研究員PD
3)同志社大学
精神神経学雑誌 125: 283-290, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-041

 本稿は,精神科病院に入院する者に対して外部から訪問して権利擁護を行う精神科病院アドボケイトの制度の全体像を示すとともに,そのなかにおけるピアサポーターの役割を明らかにすることを目的とする.精神科病院アドボケイトは,複数の異なる系譜を引き受けたものであるため,論者ごとに異なる解釈が付与されてきた.本稿では,精神疾患を有する者の保護およびメンタルヘルスケアの改善のための諸原則を背景とした法律モデルの系譜と『障害者の権利に関する条約』以降の社会モデルの系譜をそれぞれ記述した.日本において精神科病院アドボケイト制度は,法律モデルの観点から受容されてきたため,社会モデルの観点からの論述が希薄であることを指摘した.続いて政府による精神科病院アドボケイト制度の創設に向けた検討過程を記述した.「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会報告書(2017年2月)」では,事実上制度化が再検討されることとなり,権利擁護を基本としたものに変わろうとしていることを明らかにした.そのうえで著者は精神科病院アドボケイト制度の実現に向けた全体像を機能,役割,対象者,担い手,実施体制,財源など詳細にわたって提言した.最後にピアサポートの活用は,国によるピアサポートの専門性評価の政策のなかで想定されているピアサポーター像と精神医療人権センターに所属して活動する当事者の系譜とでいくつかの看過しがたい隔たりがあることを指摘した.精神医療人権センターに所属して活動する当事者は,当事者団体に所属する者が大部分を占めていた.以上を通じて精神科病院アドボケイト制度の全体像と,そのなかにおけるピアサポーターの役割を明らかにした.

索引用語:アドボケイト, 権利擁護, ピアサポート, 障害者権利条約, 社会モデル>
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