Advertisement第118回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第124巻第5号

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症例報告
甲状腺機能低下症によるPsychosis(Myxedema Psychosis)の臨床的特徴―症例報告と文献レビュー―
山田 裕士1), 藤原 雅樹1), 宋 龍平2), 枝廣 暁1), 深尾 貴志3), 酒本 真次1)4), 高東 祥一朗5), 川田 清宏2), 和迩 健太6)7), 山本 紘一郎8), 大塚 文男8), 山田 了士9)
1)岡山大学病院精神科神経科
2)岡山県精神科医療センター
3)万成病院
4)ジョンスホプキンス大学医学部精神医学部門
5)高岡病院
6)川崎医科大学精神科学教室
7)川崎医科大学総合医療センター心療科
8)岡山大学医歯薬学総合研究科総合内科学
9)岡山大学学術研究院医歯薬学域精神神経病態学
精神神経学雑誌 124: 293-299, 2022
受理日:2022年1月20日

 精神症状を呈した甲状腺機能低下症の患者の15%が精神病症状を生じると報告されており,「myxedema psychosis」と呼ばれる.しかし,わが国の精神科領域での報告は数例にとどまり,十分に認知されていない可能性がある.そこで,本症例報告では,精神科におけるmyxedema psychosis鑑別の重要性を改めて強調するため,自験例の詳細な臨床像を記述したうえで,系統的レビューで得られた症状,検査所見,治療経過の特徴を整理して呈示する.症例は50歳代の女性.X-2年に橋本病と診断され,レボチロキシンで治療されていた.X年5月にレボチロキシンを自己中断後,徐々に過敏になり,幻聴に左右されて家を飛びだすようになった.同月末に不安と動悸症状でA病院を受診し,著明な甲状腺機能低下が認められたため,内科に入院した.レボチロキシンを再開し,リスペリドンも開始されたが,精神病症状の改善に乏しく,精査を拒否するため,入院第7病日に当院当科へ転院した.転院時,幻聴は改善していたが,思路障害や焦燥は残存し,甲状腺機能低下も持続していた.脳波検査では徐波が混入しており,髄液検査ではタンパクの軽度高値を認めたことから,橋本脳症の可能性も考えたが,症状が改善傾向であったため,ステロイド投与は保留し,レボチロキシンを増量し経過観察した.すると,転院第7病日までに精神病症状は消失し,転院第16病日に退院した.12月にリスペリドンを中止後も精神病症状の再燃はなかった.X+1年8月にTSHの上昇とともに精神病症状が再発したが,レボチロキシンの増量により速やかに症状は改善した.Myxedema psychosisは甲状腺ホルモン補充により抗精神病薬中止が可能と系統的レビューが示すように,本症例もレボチロキシンの補充で症状は速やかに改善した.Myxedema psychosisは抗精神病薬の中止が可能な予後良好な病態であるため,精神病症状を呈した患者の治療においては,甲状腺機能の評価を行うことが望ましい.

索引用語:甲状腺機能低下症, 器質性精神障害, 粘液水腫精神病, 精神病性障害>
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