Advertisement第116回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第122巻第9号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
総説
摂食障害の認知行動療法改良版(Enhanced Cognitive Behavior Therapy:CBT-E)
安藤 哲也1)2)
1)国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部ストレス研究室長
2)摂食障害治療支援センター設置運営事業・摂食障害全国基幹センター長
精神神経学雑誌 122: 643-657, 2020

 摂食障害(ED)は頻度が高く,回復には長期間を要し,心身の健康や心理社会的機能に重篤な影響を及ぼす.回復の可能性を高めるには早期にエビデンスのある治療を行うことが重要である.2018年4月から神経性過食症に対する認知行動療法が保険収載された.「摂食障害に対する認知行動療法CBT-E簡易マニュアル」に従って実施した場合に限り算定できる.本論では,このCBT-E簡易マニュアルのもととなっている認知行動療法改良版(CBT-E)について解説する.CBT-EはFairburn, C. G. らによって開発された.EDに焦点化された認知行動療法(CBT-ED)の代表的なものである.Fairburnらの「超診断的」認知行動理論ではEDの中核的な精神病理は,自己評価が自らの体重や体形,摂食と,これらをコントロールする能力に過度に影響を受けていることとされている.その表現として摂食抑制や,低体重,過食,嘔吐や下剤乱用などの不適切な代償行動が生じ,自己永続的な悪循環が形成され食行動異常が維持される.CBT-EはED固有の中核的な精神病理に対する治療であるため,EDの診断カテゴリーを超えて適用可能な治療である.CBT-Eは外来の個人療法を基本とし,マニュアル化,構造化された,期間限定の治療である.EDの精神病理のみを扱う焦点版と,EDの精神病理に加えて外的メカニズムも扱う拡大版の2つのバージョン,低体重のない患者用の20セッション版と低体重患者用の40セッション版の2つの強度がある.さらに若年患者や,入院治療,強化外来,集団療法への適用が研究されている.CBT-Eは低体重のないED(神経性過食症や過食性障害など)に対しては現在,最も有効性の高いエビデンスを有する治療である.また,外来レベルの神経性やせ症に対しても,他のEDの心理社会的治療と同等程度の有効性が報告されている.本論では,CBT-Eの概要や特徴,歴史,EDの超診断的認知行動理論,CBT-Eの有効性のエビデンス,CBT-Eの実際,CBT-Eをどのように学ぶかについて解説する.最後に,CBT-Eのわが国での実臨床への適用や普及についての課題や展望を述べる.

索引用語:認知行動療法, 神経性過食症, 過食性障害, 神経性やせ症, 摂食障害>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology