Advertisement第116回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第121巻第7号

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特集 インターネット依存の現状と課題
自閉症スペクトラム障害に併存するインターネット依存症のスクリーニング,および介入の必要性
宋 龍平1), 牧野 和紀2), 藤原 雅樹3), 廣田 智也4), 大重 耕三1), 池田 伸1), 壺内 昌子5)6), 稲垣 正俊7)
1)岡山県精神科医療センター
2)埼玉県立精神医療センター
3)岡山大学病院精神科神経科
4)カリフォルニア大学サンフランシスコ校精神科
5)岡山市こども総合相談所
6)岡山市発達障害者支援センター
7)島根大学医学部精神医学講座
精神神経学雑誌 121: 556-561, 2019

 岡山県精神科医療センターでは,依存症専門外来,児童思春期専門外来を開設していることもあり,インターネット,スマートフォンの過剰使用を主訴に多くの中高生が家族に伴われて相談に訪れる.「インターネット依存ではないか」と著者らの外来を受診する患者には,自閉症スペクトラム障害(ASD)が疑われる例が多い.ASDは電子メディア,電子デバイス過剰使用との関連が以前から指摘されており,インターネット依存症(IA)のリスクファクターになりうる.そこで,児童思春期精神科外来におけるASDとIAの併存に対するスクリーニングや介入の必要性を検討するために,われわれは2016年に岡山県精神科医療センターの児童思春期精神科外来におけるASDとIAの併存率を調査した.その結果,児童思春期精神科外来に通院中のASDをもつ中学生の12.9%がIAと判定された.この判定割合は同時期に同年齢を対象に実施された岡山県での一般人口調査の4倍強であり,児童思春期精神科外来通院中のASD患者はIAのハイリスク集団であることが明らかになった.しかし,一般人口を対象とした他の研究でIAの自然軽快割合の高さが示されていることや,有効性が実証された児童思春期精神科外来で簡便に用いることができる介入法も開発されていないことを考慮すると,今回の結果のみから,児童思春期精神科外来に通院するASDをもつ者に対してIAのスクリーニングおよび介入を提供するべきかについては,さらなる検討が必要であろう.そこで,われわれは2016年の横断研究の参加者を対象としたコホート研究を実施し,2019年度中に論文として報告する予定でいる.これらの研究をもとに,児童思春期精神科外来通院中のASD患者におけるIAのスクリーニングおよび介入の必要性について,データに基づいて検討を重ねていきたい.

索引用語:インターネット依存, 自閉症スペクトラム障害, 児童思春期精神科>

はじめに
 インターネット依存症(Internet addiction:IA)はYoung, K. S.によって1998年に提唱された20).その診断基準はDSM-IV-TRの病的賭博を参考に作成されており,インターネットサービス利用に対するコントロールの喪失,離脱,耐性などの症状が記述されている.インターネットサービスの過剰使用とそれに付随する問題については,IAのほかにcompulsive internet use, pathological internet useなどの用語で2000年代初頭から研究が発表され始め,2017年には400件近い研究報告がPubMedに収載されている.2018年にはICD-11の嗜癖性障害のセクションにgaming disorder(ゲーム障害)を追加するとWHOが発表したこともあり,より一層の注目が集まっている.

I.発達障害と嗜癖性障害
 発達障害のなかでも嗜癖性障害との関連が繰り返し指摘されているのが,注意欠如・多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder:ADHD)である.物質使用障害とADHDの併存割合は20~30%であると国内外から報告されている17)18).またIAの重症度とADHD症状の数が正相関するという系統的レビューもある2)
 一方,自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)と嗜癖性障害の関連を調べた研究は乏しいものの,精神障害をもつ未成年を対象とした研究では,ASDは他の精神疾患をもつ者よりアルコールおよび薬物の使用が少ないとされる13).アルコールや薬物は友人同士の集まりで初めて使用することが多いが,ASDをもつ者は対人交流の不得手さゆえにそのような場面に参加することが少ないことが,その理由として挙げられている.しかし,テレビ視聴,ゲームなど電子機器の過剰使用については,ASDがリスクファクターであるという報告がこれまでに複数なされている11)12)14).これらの報告では,ASDをもつ者にしばしばみられる視覚優位な認知特性や同一パターンの繰り返しを好むことなどが,電子機器の過剰使用を引き起こしやすいのではないか,と推測されている.
 なお,ADHD,ASD以外に発達障害に含まれる知的障害,特異的学習障害と嗜癖性障害の関連については,著者らが知る限りまとまった報告はされていない.

II.児童思春期外来に通院するASD患者とIA
 岡山県精神科医療センターでは,依存症専門外来,児童思春期専門外来を開設していることもあり,インターネット,スマートフォンの過剰使用を主訴に多くの中高生が家族に伴われて相談に訪れる.「インターネット依存ではないか」と著者らの外来を受診する患者について著者らがもつ典型的なイメージとして以下のようなものが挙げられる.
 ・やせ形の男子,母親同伴にて受診
 ・スマートフォンを使いながら診察室に入室
 ・視線は合わず,言葉の抑揚に乏しい
 ・自身の状況を母親に代弁させる
 ・過剰なインターネット使用を否認しない
 彼らの診療にあたっていると,インターネット過剰使用の背景にASDが想起される例が多い印象をこれまでもってきた.家族から生育歴を聴取し,半構造化観察・面接検査を実施してASDと確定診断することもしばしばある.しかし,われわれの知る限り児童思春期の精神科通院患者を対象にIAの割合を調べた研究はなかった.また,ASDに併存するADHDがインターネット依存症のリスクを高めるのかについても明らかになっていない.そこで児童思春期精神科臨床におけるIAのスクリーニングや介入の必要性検討の資料にするために,われわれは2016年に岡山県精神科医療センターの通院患者を対象とした横断研究15)を実施した.以降では,先行研究からの知見も交えながら,著者らが実施した横断研究および実施中のコホート研究を紹介したい.
 本横断研究は施設内倫理委員会の承認を得て,2016年2月から6月にかけて岡山県精神科医療センターの児童思春期専門外来で実施した.研究参加者の組入基準は,①2016年2月1日時点で12~15歳,中学1~3年生である,②過去6ヵ月間に2回以上,同外来を受診している,③児童思春期専門外来の担当医によって,DSM-51)の診断基準を用いてASD,ADHD,およびASDとADHDの併存と診断されている,④本研究参加について本人からの賛意,および保護者など代諾者からの同意が得られる,とした.また,除外基準として,①知的障害などのために本研究で用いられる質問紙に回答することが困難と担当医が判断した,②本研究に参加を依頼することにより混乱したり,治療関係が悪化したりするおそれがあると担当医が判断した,の2つをあらかじめ設定した.
 アウトカムとなるIAの判定,および重症度の測定には,国内外で頻用されているYoung's Internet Addiction Test(YIAT)15)の日本語版を用いた.YIATは20項目からなる自記式質問紙である.各項目は1~5点,合計点の範囲は20~100点となる.本研究では日本での先行研究5)を鑑み,70点以上をインターネット依存症(Internet addiction:IA),40点から69点をインターネット依存症疑い(possible Internet addiction:possible IA),20点から39点をインターネット依存症ではない(non-Internet addiction:non-IA)と定義した.また,研究参加者の全般的機能を定量化するためにmodified Global Assessment of Functioning(mGAF)4)を用いた.
 IAのスクリーニング,重症度評価のための尺度は40を超える9)とされるが,それぞれの尺度はIAの定義が共有されないままに作成されており,優劣はつけがたい.YIATについては20年前に作られたことから,現在のインターネット利用環境に馴染まない項目が含まれるという批判もあるが,最も多くの研究,調査で使用されている尺度であり,先行研究の結果との比較が容易である点から,日本でのIAに関する研究のほとんどで採用されている.なお,2017年にはYIATに次いで頻用されるCompulsive Internet Use Scale(CIUS)日本語版の妥当性検証論文が出版されており,今後利用が増えるかもしれない19)
 前述の組入基準を満たした164人中132人(80.5%)が本研究に参加した.研究参加者の特徴をに,診断ごとのIAと判定された割合をに示す.研究参加者132人のうちIAと判定されたのは17人〔12.9%,95%信頼区間(CI):7.6~19.7%〕であった.発達障害の診断別のIA併存割合は,ASD単独群で10.8%(9/83,95% CI:5.1~19.6%),ADHD単独群で12.5%(3/24,95% CI:2.7~32.4%),ASD,ADHD併存群で20.0%(5/25,95% CI:6.8~40.7%)であった().結果は「IAとされる者の多くはASDを併存しているのではないか」という著者らの臨床での感覚に合致したものだった.第1にIAと判定された本研究参加者の割合は同時期に同年齢を対象に実施された岡山県での一般人口調査の4倍強であった.第2にADHDを併存していないASD患者においても一般人口調査の3倍強の割合がIAと判定されたことから,ADHDを併存しない場合にもASD患者はIAのハイリスク集団であることが明らかとなった.単施設研究ではあるものの,この結果からは児童思春期精神科外来に通院するASD患者はIAのハイリスク集団である可能性が高いといえるだろう.しかし,この結果のみから,児童思春期精神科外来でASD患者を対象としたIAのスクリーニングおよび介入を提供するべきである,と主張できるだろうか.

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III.本当に児童思春期精神科外来でIAのスクリーニング,介入をするべきか
 2016年の横断研究によって,児童思春期精神科外来を受診する発達障害患者はIAのハイリスク集団であることが明らかになった.しかし,この結果のみから児童思春期精神科外来でIAのスクリーニングおよび介入を積極的に行うべきとは考えない.理由は2つある.第1の理由はIAの自然軽快割合の高さである.先行研究ではIAの多くは自然軽快すると報告されており,中高生を対象とした中国,台湾の4つのコホート研究3)6)7)10)では,ベースラインでIAと判定された者の36.7~51.4%が自然軽快していたと報告している.また,成人を対象にさまざまな行動嗜癖の有病割合を1年毎に計5年間調べたカナダの研究8)では,5回の調査時点で一度でも過剰使用と判定された者のうち,2時点以上で過剰使用の基準を満たしたのはオンラインチャットで26.4%,ゲームで23.9%にすぎなかった.第2の理由はIAに対して効果が実証された簡便な介入法についての知見が不足していることである.IAに対する認知行動療法の有効性がメタアナリシスで示唆されているが16),日本の治療者が用いやすいマニュアルなどはいまだ整備されていない.そのため,現時点でIAのスクリーニングおよび介入の必要性を声高に叫ぶことは,人的資源がいまだ十分とはいえない児童思春期精神科の臨床現場の疲弊を徒に増やすことにつながりかねない.今後は臨床レベルでのスクリーニングや介入の必要性の検証とともに,一次予防として学校レベルでの適切なインターネット使用の教育や簡易介入によるIAへの効果の検証も必要となるだろう.
 上述の児童思春期精神科外来でIAに対するスクリーニングおよび介入に対して慎重であるべき第1の理由が,ASD患者にもあてはまるかを判断するために,われわれは2016年の横断研究の参加者を対象としたコホート研究を2018年春から実施している.このコホート研究の目的は,児童思春期精神科外来に通院する発達障害患者における,①IA重症度の自然経過,②IAの診断は2年後の心理社会的問題を予測するか,③IA支援に対する主観的ニーズ,の3つを明らかにすることである.児童思春期精神科外来でのIAに対するスクリーニングおよび介入の必要性を検討するためには,定量的な情報が欠かせない.今後,本コホート研究の結果を確定し,公表することで,どのような特徴をもつ患者に対して,どれくらいの資源を割くべきかという議論の端緒となれば,と考えている.

おわりに
 「IAとされる者の多くはASDを併存しているのではないか」というわれわれの臨床で得た感覚から始まった2016年の横断研究では,児童思春期精神科外来通院中のASD患者はIAのハイリスク集団であることが明らかになった.しかし,一般人口を対象とした研究結果ではIAの自然軽快の割合が高いことが示されているため,児童思春期精神科外来通院中のASD患者のIAも自然軽快する可能性が残る.また,IAに対する有効性が実証された児童思春期精神科外来で簡便に用いることができる介入法も開発されていない.よって,本横断研究の結果のみをもって,介入の必要性があるか否かについての結論は得られない.われわれは2016年の横断研究の参加者を対象としたコホート研究を実施し,2019年度中に論文化を予定している.これらの研究をもとに,児童思春期精神科外来通院中のASD患者におけるIAのスクリーニングおよび介入の必要性について,データに基づいて検討を重ねていきたい.

 なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.

文献

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