「入院医療中心から地域生活中心」への流れのなかで,精神保健医療福祉の分野でもさまざまな形で,多職種チームによる協働が行われてきている.チーム医療は,「1人の患者を支援するために,さまざまな職種が連携・協働する医療」とまとめられる.疾患を抱えながら地域で生活する患者を支えるためには,多職種でのかかわりの利点や欠点を理解し,お互いの職種の特性を理解することが必要で,これによりさらによい協働を実践することができる.多職種連携能力には3つの基盤となるコア・コンピテンシーがあり,他の職種と区別できる専門職能力,すべての専門職が必要とするコミュニケーション能力などを含む共通能力,そして協働的能力が挙げられる.また,多職種が共通した認識のうえで協働していくためには,共通言語が必要であり,その1つとして国際生活機能分類(ICF)がある.これを用いることで,医学モデルと社会モデルという2つのモデルを統合し,障害を人が「生きる」こと全体のなかに位置づけて,「生きることの困難」を理解できる.そして,適宜チームの評価を行い軌道修正していくことが必要である.
日本精神神経学会 多職種協働委員会 企画
第17回
専門医に知ってほしいこと―組織管理者になるための手引き―
三重県立こころの医療センター(精神科医)
精神神経学雑誌
121:
39-46, 2019
<索引用語:チーム医療, 社会モデル, 多職種協働, 多職種連携能力, 国際生活機能分類(ICF)>