Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第121巻第1号

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症例報告
非けいれん性てんかん重積を繰り返し診断に難渋した,奇形症候群が疑われた1例
畑 真弘1), 岩瀬 真生1), 石井 良平1), 池田 俊一郎2), 青木 保典1)3), 池田 学1)
1)大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室
2)関西医科大学精神神経科
3)日本生命病院精神科
精神神経学雑誌 121: 3-12, 2019
受理日:2018年8月10日

 非けいれん性てんかん重積(NCSE)は,けいれん症状を欠いた状態で,発作活動やてんかん原性の活動の放電の継続に関連する,行動や精神過程の変化とされる.発作中に認知・行動異常や脱抑制などの症状を伴うことがあり,精神症状として精神科医が対応を依頼されることも稀ではない.今回われわれは精神科病棟に入院し,診断に非常に難渋したNCSEの症例を経験したので報告する.症例は30歳代女性.全般てんかんの診断のもと,さまざまな抗てんかん薬を導入されたが複数の薬剤で薬疹が誘発され薬剤選択に大きな制限があり発作のコントロールは不十分であった.当院入院前,複数回の強直間代発作後に意識障害が数日以上にわたり遷延し,NCSEの可能性も考慮されたが,脳波では全般性徐波が主体で棘波などのてんかん原性活動を認めず,ジアゼパム投与によっても意識障害が改善しなかったため,この時点ではNCSEではないと判断された.入院後,発作後もうろう状態の遷延あるいはてんかん性精神病による昏迷の可能性を考えて治療を行い,一時的に抗精神病薬が奏効したようにみえた経過があり,その後,誤嚥性肺炎を併発し身体的治療が優先されることとなり,診断がさらに遅延した.しかし,その後の脳波検査時に,脳波の変化と一致して意識障害が変動する様子が観察され,抗てんかん薬の調整で意識障害の頻度が著減し,意識障害の原因となるような脳の器質的な障害など他の要因がないため最終的にNCSEと診断した.クロバザムで意識消失発作が有意に減少し,最終的にはペランパネルにより発作がほぼ消失した.NCSEにおいては棘徐波複合などの典型的なてんかん原性波形を伴わない脳波所見がありうることを理解し,遷延する意識障害や高次脳機能障害を呈する症例ではNCSEの可能性を念頭において診療することが重要である.

索引用語:てんかん, 非けいれん性てんかん重積, 脳波, 奇形症候群, 意識障害>
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