Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第120巻第2号

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特集 カタトニア(緊張病)の治療を問い直す
カタトニア(緊張病)の身体的側面について
三好 功峰
一般財団法人仁明会精神衛生研究所
精神神経学雑誌 120: 123-130, 2018

 近年,カタトニアは,統合失調症の亜型ではなく,特異な神経精神症状の1つと考えられている.DSM-5では,カタトニアに特徴的な客観症状のうちの3つ以上が認められることを基準として診断される.カタトニアの病態生理は明らかではないが,無動性カタトニアと“緊張性無動”(著しい恐怖や不安で動けなくなる状態)との類似が注目されている.また,カタトニアにおいて,GABAA,NMDA,ドパミン系などの神経伝達物質の変化や,それに伴う神経ネットワークの異常がみられることが知られている.悪性カタトニアはカタトニアの重篤な身体症状である.神経伝達物質の変化などカタトニアに内在する身体的要因によるものと考えられるが,脱水,激しい興奮による横紋筋損傷など二次的な要因がかかわっている可能性がある.類似の症状は,神経遮断薬による悪性症候群においても出現する.悪性症候群は,ドパミン作動系の遮断によるとされるが,セロトニン過剰によるセロトニン症候群との関連も注目されている.カタトニアは,さまざまな身体疾患,神経疾患においてみられるが,なかでも自己免疫性シナプス脳炎は広く関心を集めている.そのうちの抗NMDA受容体脳炎は,NMDAと精神症状との深い関係を示すものである.1960年代にわが国では,致死性カタトニアの症状を呈する急性リンパ球性脳炎が報告されたが,抗NMDA抗体脳炎と関連して見直されている.カタトニアの治療としては,身体疾患や神経疾患が原因となっているときには,その治療が優先される.精神疾患におけるカタトニアや身体因性のカタトニアのいずれに対しても,GABAA受容体作動薬やNMDA受容体拮抗薬によって神経伝達物質の不均衡を調整することが行われる.修正型電気けいれん療法は有効であるが,身体的状態,とくに心血管系機能を慎重に調べたのちに行われるべきである.

索引用語:カタトニア, せん妄, 悪性カタトニア, 抗NMDA受容体脳炎, GABAA受容体作動薬>
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