近年,妊産婦のメンタルヘルスに関する産科医らの意識は高まってきており,精神科医による産科医療への関与が求められている.その主な担い手になるのは,コンサルテーション・リエゾン精神医学に携わる総合病院精神科である.著者は無床総合病院精神科で周産期メンタルケア専門外来を開設している.妊産婦の外来診療では問診や相談に時間をかける必要があり,予約人数を少なく設定している.専門外来を開くことの意義は,余裕のある診療によって薬物療法を最小限に抑えられること,医療者が専門家としての責任を自覚できること,相談窓口が明確になること,妊産婦のメンタルヘルスに関する経験や知見が蓄積することなどであると考えられる.無床総合病院精神科の弱点は入院適応のある患者を診療できない点である.そのため入院が必要になるような症状の再発や再燃が起こる可能性について評価することが求められ,軽症例や寛解維持例の受診も多い.これらの診療はリエゾンモデルに沿って考えると理解しやすい.精神障害の再発・再燃を予測し,早期から対応するためには,その危険因子の有無や初発時の症状,家族や地域のサポート状況などを確認する.状態が安定しているときの表情や話しぶりを観察しておくことも,症状悪化の早期発見につながる.専門外来では精神科医とリエゾンナースとの協働が有用である.リエゾンナースは他の職種の意見を集約し,専門外来での情報をまた他の職種に伝えることで,精神科医と他の職種との橋渡し役になることができる.リエゾンナースが加わることで専門外来の運用の仕方に幅ができ,診療の質も向上するものと考える.
無床総合病院精神科で行う周産期メンタルケア専門外来
埼玉医科大学総合医療センターメンタルクリニック
精神神経学雑誌
120:
39-44, 2018
<索引用語:コンサルテーション・リエゾン精神医学, 周産期メンタルヘルス, 多職種連携>