Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第120巻第1号

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特集 妊産褥婦のこころを支えたい―今,精神医療に求められる周産期リエゾン活動―
心理支援に特化した助産師外来との連携―周産期メンタルケア外来(精神科)の経験から―
菊地 紗耶1), 小林 奈津子1), 本多 奈美2), 齋藤 秀光3), 西郡 秀和4), 酒井 由里4), 松岡 洋夫2)
1)東北大学病院精神科
2)東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野
3)医療法人菅野愛生会緑ヶ丘病院
4)東北大学病院周産母子センター
精神神経学雑誌 120: 32-38, 2018

 助産師は周産期メンタルヘルスにおいて重要な役割を担う.国内の多施設研究の結果から,助産師がメンタルヘルスの教育や研修を受けることで,心理的問題を有する妊産婦のスクリーニングやケアを行うことが可能であると明らかになった.産後うつ病をもつ母親は自らケアや治療を求めないことが多く,妊産婦に身近で直接的なケアを提供できる助産師によるメンタルヘルスケアが重要である.そこで当院精神科の周産期メンタルケア外来での精神科医としての経験をもとに,助産師外来との連携についてまとめた.当院の助産師による心理支援は,全例において精神科既往歴や婚姻状態,経済的問題,育児支援の有無などの心理社会的リスク因子を抽出することから始まる.心理的支援や育児支援体制の調整などが必要な妊婦は,助産師による心理支援外来の利用を勧める.十分経験を積んだ10名程度の助産師が日替わりで心理支援外来を担当し,妊産婦1人に1時間程度の時間を確保し,不安の傾聴・保健指導を行い,ニーズに合わせ,臨床心理士や精神科医,メディカルソーシャルワーカーへ紹介する.多職種ミーティングにて,心理支援外来利用中の妊産婦や,臨床心理士,精神科医がかかわっている妊産婦について,現状の確認と方針の検討,情報共有を行っている.助産師によるメンタルヘルスケアの充実のためには,心理的問題や精神疾患の重症度に応じたケアの役割分担と連携が欠かせない.軽症例には,助産師による質の高いプライマリケアを行い,中等度以上の場合や,軽症であっても判断に迷う場合には,精神科医に気軽に相談や紹介ができるシステムが必要である.周産期メンタルヘルスへの関心が高まるなか,助産師はゲートキーパーかつハブ的役割を担い,さらに軽症例へのケアの提供も期待される.これらの役割をもつ助産師を後方支援するのがわれわれ精神科医の責務となろう.

索引用語:多職種連携, 助産師, 周産期メンタルヘルス>
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