人生の早期に幼い子どもがさらされた,想像を超える恐怖と悲しみの虐待体験は愛着障害を引き起こす.これまで,反応性愛着(アタッチメント)障害(RAD)の神経基盤は探索されていなかった.RAD患児の脳MRIによる検討で,金銭報酬課題による腹側線条体の神経賦活低下や視覚野灰白質容積減少が明らかになった.一連のエビデンスについての理解が,大人が責任をもって子どもと接することができる社会を築き,少しでも子どもたちの未来に光をあてることができればと願っている.
マルトリートメントに起因する愛着障害の脳科学的知見
福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援研究部門
精神神経学雑誌
119:
621-627, 2017
<索引用語:児童虐待, マルトリートメント, トラウマ, 反応性愛着(アタッチメント)障害, 脳科学>