Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第8号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
特集 非定型精神病臨床・研究の最前線
周期性精神病に対する女性ホルモン療法の奏効機転はどのように説明できるのか
川村 諭
東京慈恵会医科大学精神医学講座
精神神経学雑誌 119: 550-557, 2017

 周期性精神病は,急性発症と周期性発病,基本症状としての情動・意識・精神運動性障害,躁―うつ,不安―恍惚,興奮―昏迷といった二極性病像などを特徴とする非定型精神病である.周期性精神病は月経周期に同期して再発を繰り返す場合があり,そうした症例に対する女性ホルモン療法の著効例がこれまでにいくつか報告されている.本稿では,周期性精神病に対する女性ホルモン療法の奏効機転を文献的に考察した.これを以下に要約する.無排卵周期に伴う病相は,視床下部を含む上位中枢機能の脆弱性に起因すると考えられる.こうした状態では,卵胞発育不全による低エストロゲン状態から,LHパルス分泌の撹乱とLHサージの抑制が生じる.クエン酸クロミフェンや月経周期後半のエストロゲン・プロゲスチン合剤など,無排卵周期に伴う病相に対する女性ホルモン療法の奏効機転は,月経周期に一致した視床下部の機能変動を生理的な形に近づけることであると推察される.一方,排卵性周期に伴う病相は,脆弱性というよりもむしろ確立された上位中枢における病的自律性を基盤にしていると考えられる.こうした病的自律性に加え,中枢神経系におけるエストロゲン作用の増大も,排卵性周期に伴う病相の共通病理として想定されている.そのため,排卵性周期に伴う病相に対しては,抗ゴナドトロピン作用と抗エストロゲン作用を併せもつ製剤が効果的である.この際,排卵抑制が治療的に働く場合とそうでない場合とがある.

索引用語:周期性精神病, 月経, エストロゲン, プロゲステロン, クエン酸クロミフェン>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology