Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第5号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
精神医学奨励賞受賞講演
第112回日本精神神経学会学術総会
統合失調症と覚醒剤精神病の前頭前皮質における血液動態反応の違い
山室 和彦
奈良県立医科大学精神医学講座
精神神経学雑誌 119: 347-354, 2017

 統合失調症と覚醒剤精神病は類似した臨床症状を認めるため,鑑別に苦慮することが多い.しかし,ここ最近,近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)が両疾患の鑑別に寄与する可能性が示唆されている.そのため,今回われわれはNIRSを用いて統合失調症と覚醒剤精神病の前頭葉機能を評価した.対象として,統合失調症は平均39.1歳の19例と,覚醒剤精神病は年齢,性別,知能指数を一致させた平均39.9歳の15例で検討を行った.賦活課題としては言語流暢性課題(VFT)を用いて,課題遂行時の前頭前皮質の酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)変化を測定し,統合失調症群と覚醒剤精神病群を比較した.また,精神症状は陽性・陰性症状評価尺度(PANSS),認知機能には統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)をそれぞれ用いた.結果として,前頭領域全24チャネルのうち,VFT遂行時の統合失調症群のoxy-Hb変化が覚醒剤精神病と比較して有意に低値であり,作業記憶と関連のある背外側前頭前野付近であるチャネル8,9,12であった.一方で,PANSSとBACSに関しては両群で有意な差は認めなかった.これらのことから,統合失調症と覚醒剤精神病の臨床症状が類似していたとしても,前頭前野の血液動態反応はVFTにより異なる反応を示し,NIRSが両疾患を鑑別できる生物学的指標となりえる可能性が示唆された.

索引用語:統合失調症, 覚醒剤精神病, 作業記憶, 背外側前頭前野, 近赤外線スペクトロスコピィ>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology